引退会見で涙を見せた川端。その野球への情熱はチームにも浸透していた(C)TsutomuBEPPU/CoCoKARAnex…

引退会見で涙を見せた川端。その野球への情熱はチームにも浸透していた(C)TsutomuBEPPU/CoCoKARAnext

 今季限りでの現役引退を表明したヤクルトの川端慎吾が、9月27日の広島戦(神宮)の7回二死から代打で登場し、鮮やかに右翼方向へはじき返す二塁打で出塁。球場のファンを大いに湧かせた。

【動画】引退表明の川端慎吾、1100本目の一打は二塁打!神宮が湧く

 川端は同日に行われた引退会見で「山あり谷ありというか、良いことも悪いこともたくさんありましたし、優勝もさせてもらいましたし、タイトルを獲ることもできました。日本一を決めるヒットも打たせてもらいました」と、プロ20年間の思い出を振り返った。

 「身体が全然どこも痛くなかったですし、1年間ケガをせずに、ファームでしたけど、しっかり野球ができた」と、腰痛に悩まされて2020年には腰の手術も行ったが、今季は身体の状態は問題なかった。それだけに「なかなか諦めきることができなかった」と、悩み抜いた上でユニフォームを脱ぐ決断をした。

 そんな川端の野球への情熱は、チームにも浸透していた。大松尚逸チーフ打撃コーチは、川端について「野球に取り組む姿勢、1打席に懸ける思いというのは誰よりも理解して、誰よりもしっかり準備してやってくれていた。若い選手もそういう姿を見てきた。学んでいる選手はめちゃくちゃ多くいる」と、チーム野手最年長である37歳の存在の大きさを語ってくれた。

 引退会見では、山田哲人、中村悠平、内山壮真、古賀優大と、愛媛・松山でともに自主トレに励んできた4選手が花束を持って駆けつけると、川端は涙をこらえることができなかった。

 2015年に首位打者と最多安打のタイトルを獲得し、燕の安打製造機として三塁のレギュラーをつかんだが、ケガの影響で思うような成績を残せない日々も味わった。近年は代打で1試合1打席が勝負だった。21年に代打打率「.366」という驚くべき数字を残したが、昨季は代打での打率が「.224」と低迷。すべてが順調だったわけではない。

 「逆方向へ力の伝わった打球が打てない」という理由から、大松コーチとともに、横と正面からトスするボールを打ち込む練習を繰り返し、打撃の改善を図った。

 大松コーチは「メンタル面がかなり重要。基本的にはうまくいかないことの方が多い。21年みたいに年間通して好成績を代打で残すのはなかなか難しい」と、一振りに懸ける川端の心情を慮った。

 川端はこの日「あと1本打ちたい」と話していた通算1100本目の安打を放った。これまでは重圧を感じながら結果を残してきたが、この日の打席だけは違った。

「いつもこんな感じで立てれば打てるんじゃないかと思うぐらい、すごくリラックスして、初めて楽しみながら打席に入れました」

 28日の本拠地最終戦も打席に立つ予定で、「明日(28日)は最後なんで、厳しいでしょうね。泣いちゃうと思います」と、背番号「5」は公式戦最後の試合に思いを馳せていた。

[文:別府勉]

【関連記事】「あり得ないと自分でも思っている」引退表明の川端慎吾、自らも驚愕した「.366」――“代打稼業”の重圧、漏らした本音

【関連記事】マンシーの後釜候補に村上宗隆が浮上? 今オフFA市場での獲得を米メディアが推奨「“完璧な後継者”はすでに存在しているかもしれない」

【関連記事】「どういう風に進化していくのか」村上宗隆の“底知れぬ”能力にコーチも驚愕――重ねた経験、長所を生かす