はじめに 脂質異常症の改善で最も大切なのは「食事」です。血液中のLDLコレステロールや中性脂肪は、私たちが毎日摂る食べ物…

はじめに

 脂質異常症の改善で最も大切なのは「食事」です。血液中のLDLコレステロールや中性脂肪は、私たちが毎日摂る食べ物の影響を大きく受けています。薬に頼る前に、あるいは薬を使っていても、正しい食事習慣を続けることが治療の土台となります。

本記事では、脂質異常症の方が注意すべき食品と積極的に摂りたい食品、具体的な工夫をわかりやすく解説します。

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1. 脂質異常症で控えるべき食べ物

(1) 飽和脂肪酸を多く含む食品

・バター、ラード、ショートニング
・霜降り肉、ベーコン、ソーセージなどの加工肉
 LDLコレステロールを上げ、動脈硬化を進めます。

(2) トランス脂肪酸

・マーガリン、ショートニングを使った菓子パン、スナック菓子
 LDLを上げ、HDL(善玉)を下げるため、できるだけ避けたい脂質です。

(3) 過剰な糖質

・清涼飲料水、甘いお菓子、白米・白パンなどの精製炭水化物
 中性脂肪を増やす原因になります。

(4) アルコール

・特にビール・日本酒など糖質を多く含むものは中性脂肪を上げます。
 節酒を心がけ、1日エタノール換算20g未満を目安に。

2. 脂質異常症で積極的に摂りたい食べ物

(1) 魚

・サバ、イワシ、サンマなど青魚にはEPA・DHAが豊富。
 中性脂肪を下げ、動脈硬化を防ぐ働きがあります。

(2) 野菜・海藻・きのこ

・食物繊維が豊富で、腸内でのコレステロール吸収を抑えます。
 1日350g以上の野菜を目標に。

(3) 大豆製品

・豆腐、納豆、豆乳など
 植物性たんぱく質でLDLを下げ、肉の置き換えに最適。

(4) ナッツ類

・アーモンド、くるみなどは不飽和脂肪酸が豊富。
 少量でコレステロールを改善。塩や砂糖が添加されていないタイプがおすすめ。

(5) オリーブオイル・菜種油

・不飽和脂肪酸を含み、飽和脂肪酸の置き換えとして有効。

3. 脂質異常症の食事の工夫

・主食を精製炭水化物から雑穀や玄米へ置き換え
・肉の脂身を減らし、魚・大豆を増やす
・調理法を揚げる→蒸す・焼くへ
・間食はスナック菓子→ナッツ・果物へ
・外食では“野菜を先に注文する”習慣を

4. 食事だけでは難しいケースも

食事改善をしても、家族性高コレステロール血症や強い高LDL血症では十分に下がらない場合があります。その際は薬物療法(スタチンなど)が必要です。

まとめ

・脂質異常症では、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・糖質・アルコールを控えることが重要。
・魚・大豆・野菜・海藻・ナッツ・オリーブオイルは積極的に摂りたい食品。
・食事改善は「禁止」ではなく「置き換え」が継続のコツ。

参考文献

1.日本動脈硬化学会. 『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022』
2.日本糖尿病学会. 『糖尿病治療ガイド2024-2025』
3.Estruch R, et al. Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet. N Engl J Med. 2013
4.Jenkins DJ, et al. Effects of a portfolio-lowering cholesterol diet. JAMA. 2003

[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。