■約2年ぶりの登板を果たした久野悠斗「心が折れそうになったこともありました」 東京六大学野球秋季リーグは21日、今春まで…
■約2年ぶりの登板を果たした久野悠斗「心が折れそうになったこともありました」
東京六大学野球秋季リーグは21日、今春まで4季連続2位で天皇杯奪還を期す明大が、東大2回戦に10-0で大勝。開幕カードに2連勝し、勝ち点1を手にした。昨年4月に左肘のトミー・ジョン手術とクリーニング手術を同時に受けた久野悠斗投手(4年)が、リリーフで2年ぶりにリーグ戦復帰を果たし2回無失点。今後チームの浮沈を握る存在になりそうだ。
「地道なリハビリから始まり、トレーニングにひたすら取り組む様子を見てきましたので、個人的にもうれしい限りです」。久野以上に、戸塚俊美監督の方が感慨深げに見えた。
兵庫の名門・報徳学園高から明大入りした左腕の久野は、1年生の秋にリーグ戦デビューし、先発としても2度起用されるなど期待されていた。2年生になると、186センチの長身から投げ下ろすストレートの最速が152キロに達し、スライダー、チェンジアップ、カーブも駆使。プロからも注目される存在に成長した。ところが左肘を痛め、手術を受けたのが3年生になった直後の昨年4月4日。トミー・ジョン手術は実戦復帰まで1年から1年半かかるといわれており、大学最後のシーズンに間に合うかどうか、ギリギリのタイミングだった。
「まさか自分が大学生の間に手術をすることになるとは、考えたこともありませんでした。もともと怪我がちで、自分の甘さが出たのだと落ち込んだりしました。同期のみんなの活躍を見て、情けないと思うことも多かったです」と明かす。
今夏のオープン戦に登板したが、「制球が荒れて、まともな投球ができず、正直言って秋の復帰も厳しいかなと心が折れそうになったこともありました」と振り返る。それでも徐々に調子を上げ、なんとか秋季リーグに間に合わせた。
復帰登板は、チームが大量8点リードを奪い迎えた7回にやって来た。「リーグ戦のマウンドは2年ぶりだったので、懐かしく、感慨深いものがありました。浮足立ってしまうかなと思っていましたが、打線がたくさん点を取ってくれていたので、落ち着いて投げることができました」。スタンドには両親も兵庫県の自宅から駆けつけていた。

■戸塚監督が見た復帰登板「ストライクで勝負できていたのは大したもの」
2死から中前打、死球を与え一、二塁のピンチを招いたが、次打者を中飛に仕留めピンチを脱出。8回も続投し、先頭打者を三塁内野安打で出塁させたが、後続を断って2回28球、2安打1死球無失点で復帰登板を終えた。
この日の最速は143キロで、ストレートのほとんどが130キロ台にとどまった。「球速が全然戻っていなくて、正直言って悩みどころです」と、久野は率直な心情を吐露した。
2020年に明大の助監督に就任し、今春から監督に昇格した戸塚監督は、久野の成長も、苦しいリハビリも全て見守ってきた。今季をリリーフの“試運転”だけで終わらせるつもりはなく、「日曜日(2回戦)、もしくは3回戦に突入した場合に月曜日の先発ができるくらい復活してくれれば……という思いを持っています」と今後のビジョンを明かした。
復調次第で、エースの毛利海大投手(4年)に次ぐポジションを任せる構想を描いている。「(リーグ戦登板が2023年秋以来)2年弱空いていた中で、きっちりストライクで勝負ができていたのは大したものです。あとはストレートの戻り次第かなと思います」とうなずいた。
久野の潜在能力を評価し、10月23日のドラフト会議に向けて復調の行方に熱視線を注ぐプロ球団も多い。久野自身も今後、プロ志望届を提出する予定だという。「手術を受けたことは、人生の中で大きな糧になったと思います」と語る左腕は、ドラフト候補生として“再降臨”を果たせるだろうか。