◇国内男子◇ANAオープン 最終日(21日)◇札幌GC輪厚コース(北海道)◇7066yd(パー72)◇曇り(観衆226…

金谷拓実(左)は石川遼に競り勝ち8勝目(C)JGTOimages

◇国内男子◇ANAオープン 最終日(21日)◇札幌GC輪厚コース(北海道)◇7066yd(パー72)◇曇り(観衆2263人)

グリーンに背を向けて歩く様子も落ち着いていた。序盤2番、セミラフから放った2打目は右サイドの木の枝にかかり、地面に落ちてこなかった。紛失球として処理し、4オン2パットのダブルボギー。痛恨のシーンだったとしても金谷拓実がそれであきらめるはずがない。

次の3番(パー3)、あと少しでホールインワンというティショットを6Iで放つと、一気に勢いづいた。残り200ydから3UTでグリーンをとらえ、7mをカップに流し込んだ6番まで4連続バーディ。8番(パー3)でグリーン右手前のラフからショートゲームのミスが続き2つ目のダボをたたいても、すぐに9番(パー5)でバーディを取り返した。

プレーオフを制して通算8勝目(C)JGTOimages

2位からスタートし、2打差あった首位をとらえて折り返し。後半インは1つ前の組を回った石川遼に引き離されず、2つのパー5のバーディで追いついた。「ダブルボギーの後も粘り強く、特に後半14番くらいから良いパットでパーセーブできた」。2日連続の「69」で通算17アンダー。プレーオフ1ホール目で、石川の3mのバーディパットが「入ったと思った」と一瞬負けを覚悟したが、2ホール続けてパーでしのぎツアー通算8勝目を飾った。

昨年度の賞金王はこれが今季2試合目の国内ツアー。PGAツアーのルーキーシーズンは年間ポイントレース134位と来季のシード獲得圏外で、秋季シリーズ(フェデックスカップ・フォール)に入った。前週は「プロコア選手権」を戦い15日に帰国したばかり。午後スタートだった初日も早朝に会場で練習するなど、生半可な気持ちで出場したわけではない。

体調や栄養管理にも一生懸命で「自分を高めてくれる存在」というキャディのライオネル・マティチャック氏は今週休暇中。代役に立てた女性ハウスキャディも「常に平常心で、前向きにプレーさせてくれた」という。北海道での大会の優勝副賞はことし、来年度のプロ野球・日本ハムの主催試合でのファーストピッチ(始球式)の権利が追加された。生粋の広島ファンも表彰式でユニフォームに身を包み、「練習しときます」と笑った。

表彰式で日本ハムファイターズのユニフォームを身にまとう(C)JGTOimages

実際に始球式に参加できるかは今のところ定かではない。野球とゴルフのシーズン時期は同じ。米国で戦い続けるべく、2週後の「サンダーソンファームズ選手権」(ミシシッピ州ジャクソンCC)から再び主戦場で、生き残りをかけてプレーする。

今季は7月「全英オープン」で6年ぶりにメジャーの決勝ラウンドを戦った。それでも、結果や数字だけでは語れない日々の前進に目を凝らす。「ゴルフをするしかない難しい環境に身を置いて、より考えさせられるし、より向き合うようになったと思う。ずっと通らなかった予選を通るのも1つのクリア。数字よりも、一つひとつ前に進んでいる感覚がある。頑張り続けることで、もう一つステップを踏めると信じています」。誰よりも謙虚で貪欲な27歳。スポット参戦した母国で、心の強さを改めて見せつけた。(北海道北広島市/桂川洋一)