9月14日まで沖縄県で開催されていた「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」(以…
9月14日まで沖縄県で開催されていた「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」(以下、U-18 W杯)。一昨年、初の頂点に輝いた前回大会に続く連覇を目指した侍ジャパンU-18 代表は、8連勝で臨んだ決勝戦でアメリカに敗れ、惜しくも準優勝に終わった。
改めて、この年代で頂点に立つことの難しさを思い知らされた今大会。では、前回大会優勝指揮官の明徳義塾・馬淵 史郎監督は、今大会の代表をどのように見ていたのか。今だからこそ明かしてくれた前回大会秘話も含め『高校野球ドットコム』にU-18 W杯優勝の難しさを経験者の視点から語ってもらった。
誇ってよい侍ジャパンU-18 代表の「準優勝」
「学校の練習が夕方だったので、しっかり試合は観られなかったけどね。でも、決勝戦は日曜日の16時開始だったから全部観たよ」
秋季高知県大会開催中にもかかわらず、平日の午前中に電話取材に応じてくれた明徳義塾・馬淵 史郎監督。まずはその決勝戦について感想を聴くと、最初に触れたのは優勝したアメリカ選手のクオリティの高さについてだった。
「アメリカは投手がよかったね。特に右の投手(C.ボスウィック)は目立っていた。それとショート(A.ルイス)も巧かった。決勝戦では3回裏、藤森(海斗・明徳義塾)のショートライナーが併殺になったシーンがあったけど、あそこが抜けていたら試合はわからなかったと思うね」と、まずは冷静に決勝戦の勝敗を分けたポイントを交えつつ、相手のキーマンが機能したことに言及した。
その上で、小倉 全由氏(前・日大三監督)が指揮を執った侍ジャパンU-18代表については「地元・沖縄県の応援はありがたいことだけど、チームには逆にプレッシャーになってちょっとかわいそうだったかもしれない。僕もみなさんも連覇を期待して応援していたけど、決勝戦も勝敗は紙一重。準優勝はよくやったと思う」とチームをねぎらった。
ちなみに馬淵監督は大会後、馬淵監督とは2歳年下の小倉監督からあった連絡に対しても「準優勝だから胸を張っていいよ」とねぎらったとのこと。加えて今大会では「現チームに余計なプレッシャーをかけたくない」と、あえて沖縄県には訪問せず。オープニングラウンド初戦の配信解説も大阪からリモートで担当した。これも日本代表を愛し、勝利を心から願うゆえの細やかな気遣いの一環であったといえるだろう。
「学年の切れ目」で臨む他国と対抗する難しさ

ここまでは今大会について語ってもらった馬淵 史郎監督。では、2022年の前々回アメリカ開催(3位)、2023年前回チャイニーズ・タイペイ開催(優勝)と2大会連続でU-18W杯を闘う上で、苦労したことは何だったのだろうか?少し深堀りしてみると非常に興味深い話を聴くことができた。
まずは前回大会の話から。すでに開催国であるチャイニーズ・タイペイとの決勝再戦が決まった状況でのスーパーラウンド最終戦。ここで将は「前田 悠伍投手(大阪桐蔭~福岡ソフトバンクホークス)を投げさせることはない」と決勝戦にエース左腕を温存し、2対5の敗戦も受け入れる采配を選択。果たして翌日の決勝戦で前田は7回4安打1失点で完投。「自国開催での優勝へ向け国家プロジェクトで準備してきていた」(馬淵監督)チャイニーズ・タイペイに2対1で競り勝ち、初のU-18世界一獲得につなげた。
これに対し、今大会の状況は前回大会とは異なっていた。「今大会はアメリカとの対戦がスーパーラウンド初戦だった。ここを落としたら決勝進出の保障はないから、投手もメンバーも落とすわけにはいかない。ここも難しかったよね」と、馬淵監督は小倉監督の心中をおもんぱかった。
そしてもう1つ、見逃してはいけないのは日本とアメリカをはじめとする他国の「学年区切りの違い」だ。
「アメリカとかは9月は学年区切りの夏休み期間だから強化する時間が十分とれるんです。もちろん日本も今は昔のように甲子園で活躍した選手だけを選出しているわけではないけど、チームとしての活動時間は他国に比べてどうしても短くなってしまう。本来なら12月辺りの開催なら代表合宿も長期間組めるんでしょうが、そうなると他国のシーズンとぶつかってしまうからねえ……」
もちろん侍ジャパンU-18代表も2018年からはセンバツ後に代表候補選手強化合宿を実施。今大会でも20名中5名が夏の甲子園出場を逃したチームから選出されるなど、着実に最強チーム編成へ向けた選手選考のすそ野を広げている。
ただ、馬淵監督の指摘は経験者ならでは金言。侍ジャパンU-18代表が他国と対抗し勝ち抜くための競争力を高めるため、私たちは「十分なチーム熟成期間の確保」という課題に改めて向き合い、最善策を練っていく必要がある。