蹴球放浪家・後藤健生は世界中のスタジアムを訪れる。その際に、欠かせないものがある。スタジアムの守備を突破するために「魔…
蹴球放浪家・後藤健生は世界中のスタジアムを訪れる。その際に、欠かせないものがある。スタジアムの守備を突破するために「魔法の言葉」と「カード」が必要なのだ!
■憂鬱だった「写真撮影」の儀式
ADセンターに着いたら、受付に行ってパスポートを見せると、すぐにADカードを作ってくれます(印刷したものをラミネートして、首から下げるヒモをつけてくれます)。「受け取り」にサインしてから、このADカードをぶら下げてメディア・センターに向かうというわけです。
昔は、ここで写真撮影の儀式がありました。写真を撮影してすぐに現像した写真を張りつけてからラミネートするわけです。
ところが、なかなか良い写真が撮れません。
長時間飛行を経て到着した当日に試合がある場合などは、到着後ほとんど休息する間もなく(しかも、場所が分からず散々歩き回ってから)ADセンターに駆け込み疲れ切った顔で写真撮影に臨むことがあるので、本当にヒドい写真になってしまうこともありました。
その、ヒドい顔写真を1か月間ぶら下げて過ごすので、これはかなり憂鬱なものでした。
ただ、今はあらかじめADを申請するときにデータを添付しておいた写真が自動的に印刷されますから、撮影の手間と時間が省略されるだけでなく、気に入った顔写真が使えるので昔に比べると精神的負担も少なくなりました(まあ、どうせたいした顔ではありませんが)。
■イタリアとイングランドの「流儀」
さて、国内リーグの場合はどうなっているのでしょうか?
これは、国によって、クラブによって、スタジアムの構造によって千差万別ですが、たとえばイタリアのセリエAの場合だと入場券売り場の一角に報道受付があって、その窓口でADカードをもらってからスタジアム周囲のフェンスを越えて中に入るというのが一般的でした。
入場券売り場がたくさんあるので、これまた探すのに一苦労することがありましたが、とても分かりやすい方式だろうと思います。
一方、ちょっと分かりにくいのがイングランドのスタジアムでした。
イングランドのスタジアムは、外周のフェンスがなく、一般道路に面してスタジアムの入り口が並んでいるのが普通です。それぞれの座席ごとに入り口の番号が指定されているので、その入り口から入場すれば目指す座席はすぐそばにあるのです。
ですから、報道関係者の受付もスタジアム内にあって、その入り口というのがとても分かりにくいのです。マンチェスター・ユナイテッドのオールド・トラフォードとか、アーセナル・スタジアムでは、小さな鉄の扉を開けると中に係員のおじさんがいて、そこで名前を言ってADカードをもらうという方式でした。
鉄の扉には、「受付」とも「PRESS」とも書いてないので、知らなかったら、どこから入ったらいいのかまったく分かりません。
■「さすが」だった南米のパリ
国際試合だと、スタジアムではなくサッカー協会のオフィスに出向いてADカードをもらっておくという方式の国もありました。
1993年のワールドカップ南米予選アルゼンチン対ペルー戦を観戦に行ったときがそうでした。試合はリーベルの本拠地エスタディオ・モヌメンタルが会場でしたが、ADカードは市内の国会議事堂そばのアルゼンチン協会(AFA)に取りにこいとあったので、行ってみました。
ブエノスアイレスというのは、アルゼンチンが経済大国だった1920年代に建設されたビルが立ち並んでいる都市で「南米のパリ」と呼ばれています。AFAのビルもそんなクラシカルな建物でしたが、「ADカードをもらいに来た」と言うと2階の部屋に通されました。
人が大勢働いているオフィスではなく、お偉いさんの個室でした。実際、年配の恰幅の良い紳士が現われ、まるで面接試験のようにいくつか質問を受けてから、おもむろに「よかろう」と言ってデスクの引き出しからADカードを取り出してくれました。
アルゼンチンでは協会でもクラブでも、社会的地位が高い人が働いていることがあります(ボカ・ジュニアーズの会長をインタビューしたことがありましたが、実業家だったその会長は、その後アルゼンチン共和国大統領に就任したマウリシオ・マクリでした)。AFAのアクレディ担当者も、本当に偉そうな紳士でした。
いずれにしても、Jリーグの報道受付のあり方は考え直したほうがいいのではないでしょうか?