■連盟結成100周年の東京六大学で過去6度達成された偉業 東京六大学野球秋季リーグは14日、4連覇を狙う早大が東大2回戦…

■連盟結成100周年の東京六大学で過去6度達成された偉業

 東京六大学野球秋季リーグは14日、4連覇を狙う早大が東大2回戦で思わぬ苦戦を強いられながらも3-1で勝利した。開幕カードを2連勝で終え、無難に勝ち点1をゲットした。翌15日が誕生日で還暦を迎える小宮山悟監督の下、今季も天皇杯を引き寄せることができるか。

 今年が連盟結成100周年の東京六大学で、5連覇以上は1度もなく、4連覇は過去に6度(法大3度、早大、明大、立大が1度ずつ)。早大は2002年春から2003年秋にかけて達成して以来、22年ぶり2度目の偉業を目標に掲げている。対照的に、相手の東大は今春10戦全敗で、1998年春から55季最下位が続いている。小宮山監督が「本来の力を発揮すれば負ける相手ではないという中で、自分たちの力を誇示できるかどうかがポイント」と語っていたのもうなずける力関係だった。

 ところが、圧倒するはずだった早大は、リーグ戦初先発の髙橋煌稀投手(2年)が初回先頭打者にいきなり右線二塁打を浴び、さらに内野安打に遊撃手の失策(悪送球)が重なり、先制を許してしまう。

 2回にすかさず石郷岡大成外野手(4年)の右前適時打で追いつき、吉田瑞樹捕手(4年)の中犠飛で逆転。5回には相手の2失策に乗じ、内野ゴロの間に1点を追加したが、点差がそれ以上広がることはなかった。

 逆に2点リードで迎えた9回の守備では、4番手で登板した香西一希投手(3年)が2四球を与え“1発が出れば逆転サヨナラ負け”のピンチを招く。ここに至って田和廉投手(4年)にスイッチし、辛うじて逃げ切ったのだった。

 そもそも前日(13日)の1回戦も、7回までは3-3の接戦。8回に3点を取り、ようやく突き放す展開だった。

 小宮山監督は試合後「3連覇でちょっと浮かれ、練習に真剣味が足りなかったことを証明した試合」と厳しく指摘。「あれほどバント、バスター、エンドランを確実にできるようにしておきなさいと伝えておいたのに、全然成功しなかった。(練習場に)帰ってから何が待っているか、わかっていると思います」と、選手たちにとっては背筋が寒くなるようなセリフも飛び出した。

5回4安打無四球1失点(自責点0)の好投をした早大先発•高橋煌稀【写真:古川剛伊】

■4年生が「誇南より煌稀で行ってください」と申し入れた理由

 ただ、心なしか、厳しい言葉とは裏腹に、指揮官の表情は穏やかに見えた。「やっている選手たちが一番、こんなはずじゃないという感覚だと思いますが、こちらとしては想定内」とも口にした。2019年1月に就任し、今季で14シーズン目を迎えた“元プロ”監督は、昨春から今春まで3連覇を達成した選手たちの成長を実感し、だんだん印象が“丸く”なっているようにも思える。

 実際、この日の先発には、最近3シーズン先発の一角を担い、今年7月の日米大学野球で侍ジャパン大学代表入りも果たした宮城誇南投手(3年)でなく、あえて髙橋煌を指名した。これには監督自身の判断もあったが、「選手たちからも『(宮城)誇南より(髙橋)煌稀で行ってください』と申し入れがあった。4連覇がかかるチームですから、特に4年生の意見を尊重し、彼らが思うように試合をさせてあげたいという思いでいます」という背景があった。

 守備の要の吉田瑞は「(高橋)煌稀はもともとスピードがありましたが、安定して低めに決まるようになっていました。(宮城)誇南の調子も鑑みて、最善の策を取ろうと4年生で話し合い、監督に伝えました」とうなずく。抜擢された髙橋煌も5回4安打無四球1失点(自責点0)の好投で応えた。

 小宮山監督は開幕前、選手たちを「4連覇に挑むという経験は、なかなかできない。東京六大学の長い歴史の中で数チームしかないのだから。そのプレッシャーを感じながら戦うことを、将来の財産にしてほしい」と鼓舞したという。そして「監督の仕事は、余計なことをしないこと。その1点」と言い切る。

 あとは3シーズンにわたって難敵を跳ね除けてきた選手たちが、監督の信頼に応えてみせるだけだ。