サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニ…

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、9月3日、7日に行われたルヴァンカップ準々決勝でも採用されている試合方式「2レグ制」について。

■監督たちの間から起こった「批判」

 今季のルヴァンカップ準々決勝、「浦和レッズ×川崎フロンターレ」の場合、埼スタで1-1、等々力では2-2から延長を経て3-2で川崎が準決勝に進んだが、「アウェイゴール・ルール」が生きていれば、2戦目後の延長戦は行われず、浦和の勝ちとなるところだった。ところが、ルヴァンカップではこのルールは2年前に廃止されていたのである。

 1965年にUEFAが世界に先駆けて採用し、すべての大会で使い、やがて他国でも使われ、国際サッカー連盟(FIFA)もワールドカップ予選で採用して、「世界の常識」となっていた「アウェイゴール・ルール」。しかし、今世紀に入ってさまざまな方面から批判が出るようになっていた。

 アウェイチームに積極的な攻撃をさせようと始められたシステムだったが、第1戦では、逆にホームチームが失点しないようにと慎重になり、消極的なサッカーになるという批判が監督たちの間から起こったのだ。検討の結果、2021年、UEFAは半世紀以上続けてきたアウェイゴール・ルールを廃止することを決めた。

 それを受けて、アジアサッカー連盟(AFC)も、2023/24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ以降のアウェイゴール・ルール廃止を決定、Jリーグもそれにならったという形である。2戦を終わって合計得点が同じなら、「浦和×川崎」と同様、30分間の延長戦となり、それでも決着がつかない場合にはPK戦となる。

 最新のサッカーの公式ルール(2025/26年版)でも、「ホーム・アンド・アウェイの対戦が終了し、競技会規定として勝者を決める必要がある場合」の決定方法のひとつとして「アウェイゴール・ルール」が認められている。しかし実際には、このルールはすでにサッカー史の中のものとなろうとしているのである。

■嫌が応にも「ライバル心」が過熱する

 さて、ルヴァンカップの「浦和×川崎」では、両クラブのサポーターも熱くなった。通常のリーグ戦では勝点3を取ることが第一で、相手は首位チームであろうと最下位であろうと、1試合で得られる勝点は3であることに変わりはない。だから個々の試合では目の前の対戦相手が「ライバル」だが、終われば次の対戦相手へと気持ちが向かっていく。

 ところが、「2レグ制」では同じ相手との連戦になり、ライバル心は嫌が応にも盛り上がる。実際、埼スタでの第1戦では、水曜日だったこともあり、入場者数は1万9767人と低調だった。しかし等々力での第2戦は「超満員」と言っていい2万3214人が詰めかけた。

 この試合は川崎にとって今季のルヴァンカップのホーム第1戦だったが、すでに14試合をこなしたJ1リーグの平均入場者数(2万1868人)を大きく上回り、第23節(7月5日)の鹿島アントラーズ戦(2万3675人)に次ぐものだったのだ。もちろん、南側スタンドを埋め尽くし、川崎のサポーターを圧倒する声を上げ続けた浦和サポーターの「貢献」が大きかった。

 これを通常のリーグ戦にも適用すれば、もっと盛り上がるのではないかと考えた人がいる。アメリカのメジャーリーグベースボールやプロバスケットボールにヒントを得て、リーグ戦でも1カードのホームとアウェイを連続させて行ったら、もっと関心が高まるのではないかと考えたのだ。Jリーグでも一時期、真剣に検討された。

■利益よりも「リスク」のほうが大きい

 2試合の「アグリゲート(集合、総計)」で勝ったチームを「勝利」とし、同点なら延長戦、PK戦で決着をつける。20クラブで構成されている現在のJ1でいえば、1シーズンでこうした「シリーズ」を19回積み重ねることになる。その「勝利」数の多いチームを優勝とする。勝利数が同じときには、1試合ごとの結果を現在と同じ「勝点(第2戦でアグリゲートが同じ場合の延長戦やPK戦はカウントしない)」で順位を決める…。

 たとえば、ヴィッセル神戸がシーズン開幕の「第1シリーズ」で「関西ダービー」のガンバ大阪と当たり、「第1レグ」ではノエビアスタジアムで、そして翌週の「第2レグ」はパナソニックスタジアムで戦う場合を考えてみよう。第1戦は2-1、第2戦は3-4で1勝1敗。パナソニックスタジアムで延長戦に入り、延長戦では両チーム1点を記録してPK戦となり、あくまで仮定だが、神戸が4-3で勝ったとする。

 この結果、得られるものは、神戸は「勝利1、勝点3」、G大阪は「勝利0、勝ち点3」である。どうだろうか? ただこれは、けっして私の好みではない。ただ過去にそのようなアイデアがあったという話である。

 だが結論として、この案は実現しなかった。理由は「盛り上がり過ぎる」ことだった。あまりに2クラブ間のライバル心が剥き出しになり、アクシデントにつながるのではないかという懸念があったのである。この案が考えられたのは1990年代だったが、当時はまだ「フーリガン」に対する恐怖心が人々の心をとらえ、サポーターを過剰に煽るこのシステムは、利益よりもリスクのほうが大きいと判断されたのだ。

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