<令和7年度 秋季埼玉県大会北部地区予選:熊谷3-2正智深谷>◇7日◇1回戦◇熊谷公園球場 新人戦北部地区ベスト8で地区…

<令和7年度 秋季埼玉県大会北部地区予選:熊谷3-2正智深谷>◇7日◇1回戦◇熊谷公園球場

 新人戦北部地区ベスト8で地区のシードを獲得した熊谷と北部の強豪・正智深谷との一戦。

 正智深谷・柳星斗(2年)、熊谷・荒井佑太(2年)と両エースが先発し試合が始まる。

 試合は序盤から両投手がそれぞれの持ち味を出し相手打線を封じる。

 熊谷・荒井は制球の良い技巧派投手。変化球中心の組み立てで正智深谷打線に連打を許さない。

 一方の正智深谷・柳も力感のないフォームから最速130km後半の直球と変化球をバランス良く交え、制球も安定しており、熊谷打線を寄せ付けない。

 先制したのは正智深谷であった。

 5回裏、熊谷・荒井は先頭を四球で歩かせると、続く小林遼真(2年)にバスターを決められ無死一、二塁とされる。バントで1死二、三塁のピンチを招くと、ワイルドピッチにより1点を先制される。

 対する熊谷もすぐに反撃を開始。

 6回表、1死から鳥越心(2年)が右前打を放ち出塁すると、2死後、正智深谷・柳の足が攣り試合が中断。再開後、清水維心(2年)も四球を選び2死一、二塁とし、柳はここで降板する。正智深谷の2番手・志村征哉(2年)は最速140km近い直球が武器のパワーピッチャーだが、その代わり端、森田航宇(2年)が左越えの2点適時二塁打を放ち2対1と逆転に成功する。

 ここから両校総力戦の様相を呈す。

 6回裏、熊谷・荒井は先頭を死球で出すと、さらにワイルドピッチで無死三塁に。1死後、小菅にも死球を与え、マウンドを1年生左腕の須川統へ譲る。須川も流れを変えるには至らず、ワイルドピッチにより2対2の同点とされる。

 7回裏にもこの回からマウンドに上がった熊谷の3番手、動くボールが武器の右腕・鈴木十輪(2年)が2番・土田大貴(2年)、3番・本山大登(1年)に連打を浴びると、続く片野にも右前打を浴びるが、二走・土田をライト・鳥越の好返球で本塁封殺し勝ち越しは許さない。

 すると熊谷は8回表、先頭の鳥越が左前打で出塁すると、続く主砲・里見駿(2年)に対し、熊谷ベンチは迷わず強攻。「低めのストレート。狙ってました」と、里見は期待に応え左中間へ適時二塁打を放ち3対2と勝ち越しに成功する。

 そして、熊谷1点リードで迎えた9回裏、最大の試練を迎える。

 熊谷・鈴木は代打・亀谷光汰(2年)に右前打を浴びると、2死後、土田はショートゴロに打ち取るが、これがエラーとなり2死一、二塁。さらに本山へ四球を与え2死満塁とし4番・片野を迎える。この絶体絶命のピンチで鈴木-里見のバッテリーは「ピッチャーの得意な球で勝負しよう」と、片野から三振を奪う。熊谷が正智深谷を接戦で制した。

 熊谷を率いるのは、富田大貴監督。母校野球部OBで選手時代は17年から20年まで埼玉武蔵ヒートベアーズでプレー、昨年の侍ジャパンU-18ではアシスタントコーチを務め、昨年11月に監督就任した。

「選手の長所を伸ばすことができれば」と、その意気込みを語る。

「配球面では富田監督が教えてくれるのでそれを参考にしている。ボール球で打者から逃げないことや、リードのパターンを作るとか」(里見)と、既に選手からの信頼を得ている富田監督。「(3投手をリードし)里見はかなり疲れたと思います。特に荒井、鈴木はよく投げてくれた。柳くんは良い投手なので高めを振らないようにと言っていたんですが、それでも振らされてしまう。バントミス、プレッシャーがかかる場面での守備などまだまだ詰める所は多い」と、貴重な勝利にも浮かれず反省を忘れない。

 また投手陣は技巧派が多い中、この試合際立ったのが正捕手里見のリードだ。肩も強くこの日2つ盗塁を刺し、一塁牽制でも刺した。「シードだったんですけど相手私立なので受けずに攻めて行こうと。次戦は最小失点で打ち勝つのがチームとしての目標なので、そこに近づけるように」と、里見は攻めの姿勢を強調する。継投タイミングに関しても話し合って決めるなど、冨田監督の信頼は厚い里見。比重は大きいが、今後も彼の攻守での活躍がチーム浮沈の鍵を握る。

 熊谷はこれで秋15年ぶりの県大会出場へ大きく前進。次戦の熊谷西戦は大事なゲームとなる。