阪神新人監督としては初年度の優勝を飾ったのも史上初の快挙となった(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARA…

阪神新人監督としては初年度の優勝を飾ったのも史上初の快挙となった(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext
野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」。今回は9月7日に広島を2-0で下し、2リーグ制以降、最速V、2位に17ゲーム差をつけた藤川阪神の大総括!本当に強かった今季を3大ポイントを挙げて振り返る。
今年は虎の強さを最初から最後まで示したシーズンだった。開幕戦前はメジャーとのプレシーズンマッチにおいて、カブス、ドジャースを破ったことも話題を呼んだ。
優勝を決めた7日時点で、2位以下のセ5球団が借金と貯金独り占めの大独走に佐野氏は「一番はやっぱりまずは投手陣の安定でしょうね」と振り返る。チーム防御率はリーグトップの2.12、救援防御率に至っては圧巻の1.93(7日現在)。先発陣では才木、村上の両エース筆頭に盤石の先発陣を擁し、ブルペンも及川、石井大、岩崎とバックアップも完璧だった。
次に「なんといっても佐藤輝明選手の覚醒でしょう」と佐野氏は話す。昨季までは「当たれば一発あるが…三振も多い」というタイプだったか、今年は本格的な長距離砲へと成長した。36本塁打、89打点の打撃二冠でチームをけん引。覚醒の要因には選球眼の良さなどもあげられている。
そして最後の3ポイント目には「やっぱり守備力の向上も大きいんじゃないですかね」とミスが減ったことを挙げた。チーム失策数は中日に次いで、リーグ2位の「53」(7日現在)。昨年、23失策を記録した佐藤輝が今季は三塁手として96試合に出場する中で、わずか「5」と失策を大幅に減らしたことも大きかった。
ほかにも昨年は守備固め、代走要員だった熊谷敬宥も遊撃で先発した際にも好守でチームを盛り立てた。「(前任の)岡田監督の時はある程度守備は固定していましたけど、今年は木浪をショートから外し、小幡ら若手を起用しました。やっぱり要所要所で守備を重視しましたね」と投手力が強みでもあるだけに、守備力を重視したことも勝ち星につながったとした。
また23年の日本一メンバーも多く残っていることで「やっぱり優勝経験のあるメンバーが多いので、勝ち方を分かっている。勢いに乗ると行きますよね」と経験値も味方したとした。
打線は1番近本光司、2番中野拓夢、3番森下翔太、4番佐藤輝、5番大山悠輔と積極的休養も取りながら、ほぼ固定メンバーで破壊力抜群。投手陣も盤石とくれば、負けようもない。
一方で阪神に独走を許した裏にも佐野氏は目を向けた。「あとはほかの5球団があまりにも阪神を走らせすぎたというのもありますよね」ときっぱり。「シーズンを通じて阪神はチーム力が上がっていったが、ほかの5球団は現状維持しかできなかった」と続けた。
2位の巨人はオフにソフトバンクからFAで甲斐拓也、中日の絶対守護神だったライデル・マルティネスを獲得など大型補強を果たしながら、5月に主砲、岡本和真を故障離脱で欠くと打線の形成に苦しんだ。3位のDeNAも主砲の牧秀悟が故障のため8月1日に登録抹消、ここにきて主軸の宮崎敏郎もひざのコンディション不良で抹消となった。
首位阪神も交流戦の時期にブルペンエースの石井大が頭部付近に打球を受け、離脱したことも響き、7連敗と苦しんだ時期はあったが、そのときごとに課題をしっかり潰していったことで戦う形を作っていった経緯もある。一方で2位以下の球団は、故障者なども出たことで、チーム力を上げられなかったと指摘した。
まずは球団創設90周年の節目の年にしっかりチームをまとめた藤川監督の手腕、選手たちの力が高く評価された。来る、CSではこの阪神をまくるチームが出てくるのか。今後のセ・リーグの戦いも佐野氏はチェックしていきたいとした。
【さの・しげき】
1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。
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