(17日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 横浜5―0津田学園) 力負けだった。横浜の織田翔希投手(2年)は、1…
(17日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 横浜5―0津田学園)
力負けだった。横浜の織田翔希投手(2年)は、150キロ前後の速球と落ちる変化球を使い分け、制球も抜群だった。試合後、津田学園の恵土湊暉(あつき)主将(3年)は「涙より、一番対戦したかった横浜相手に力を出し尽くした喜びと、支えてくれた方々への感謝が湧いてきた」と振り返った。
主将になったのは今年の年明け。それまで、だれがやるのか流動的だったが、「主将の条件は、部員がこいつになら従うしかないと思うこと」と、佐川竜朗監督に指名された。「ぐいぐい引っ張るタイプではない。背中を見せ、ついてきてもらう」と恵土主将自身も語る。
左の好打者だが、打撃の調子が上がらず、三重大会の打率は2割3分1厘。それでも、試合のほとんどで4番を任され、決勝では好走塁で唯一の得点をあげて優勝に貢献した。「自分の悩みは外に出さず、チームを勢いづける。頼もしい主将に育ってくれた」と佐川監督は話す。
甲子園入り後も、監督つきっきりで打撃フォームの指導を受けることもあった。1回戦の叡明(埼玉)戦で、3三振の後に逆方向の左前安打。「バットを変えてみたら、バランスがなじんで打てた」と、復調の兆しを感じていた。
この試合は5番打者として出場。二回の内野ゴロでは、無意識に一塁へヘッドスライディングし、「ふだんは冷静な恵土が、気持ちをあらわにしている」と周囲を驚かせた。
七回には、安打の犬飼悠之介選手(3年)に続いて、7球目の144キロの速球を、逆方向の左前に運んで好機を広げ、「やっと自分の打撃ができた」と恵土主将。得点はできなかったが、チームは3連打で1死満塁と攻め、見せ場を作った。
待ちに待って、10日ぶりにできた試合。ふだんは感情を表に出さない主将から、毎回守備から引き上げる時、自然と笑みがこぼれ出た。「こんな自分に、よくついてきてくれた。大舞台をともに戦った仲間は、一生の財産になる」(本井宏人)