プロ野球も終盤戦。昨季セ・リーグ優勝の巨人に楽しみな投手が出てきました。2年目の森田 駿哉投手です。7月30日に一軍昇格…
プロ野球も終盤戦。昨季セ・リーグ優勝の巨人に楽しみな投手が出てきました。2年目の森田 駿哉投手です。7月30日に一軍昇格し、先発2試合で2連勝と好調です。
富山商時代にパワフルなピッチングを見て惹かれた投手です。早生まれの森田投手は今年で28歳。卒業して苦節11年で、NPBの舞台でようやく自分のピッチングができている姿を見て感慨深いものがあります。
高校最終学年の活躍は世代屈指左腕に相応しいものだった
「富山に140キロを超える大型左腕がいる」という情報を14年春に聞いて、機会があればみたいと思っていました。
14年6月、さっそく春季北信越大会の開催地だった富山県に向かいました。大会2日目に登場した富山商は当時、新鋭だった小松大谷と対戦。
森田投手はこの試合で先発し、1失点11奪三振完投勝利を挙げました。その投球に衝撃を受けました。14年の高校野球界で140キロ中盤を連発する大型左腕は佐野日大・田嶋 大樹投手(オリックス)のみ。森田投手は田嶋投手と同様の140キロ台の速球を投げ込んでいました。体全体を使った投球フォームで、見ていてワクワクさせられる投手でした。
そして夏の甲子園に出場すると、初戦の日大鶴ケ丘戦では最速144キロの速球、切れ味鋭いスライダーのコンビネーションで、11奪三振完封勝利。3回戦に進出し、大会ナンバーワン左腕と呼ばれる存在となりました。
こうした実績が買われ、14年の高校日本代表に選出され、第10回 BFA 18Uアジア選手権に出場します。当時の代表には巨人の主砲・岡本 和真選手(智弁学園)、西武のエース・髙橋光成投手(前橋育英)などその後、プロの世界でも活躍する主力選手が多くいました。その中で森田投手は左のエース格として期待され、決勝の韓国戦で9回途中まで2失点の力投。チームは敗れ、準優勝となりましたが、世代を代表する左腕に相応しい活躍を見せていました。
高卒プロ入りも期待されましたが、法政大進学を選択しました。4年後の18年にはドラフト上位候補に挙がる存在という声が多かったです。筆者もそうなる投手だと期待していました。しかしここから苦難の道のりだったのです。

高卒から9年かけてプロ入り プロ入り後も手術を経て、掴んだプロ初勝利
法政大では1年春からリーグ戦に登板し、いきなり7試合に出場。開幕戦に登板するなど、主力投手として活躍しますが、左肘を痛め、手術などを経て登板したのは、最終学年の4年春までかかります。4年春、秋ともにリーグ戦に登板しますが、指名圏内のパフォーマンスとまではいかず、Honda鈴鹿でプレーすることになります。
Honda鈴鹿では1年目から公式戦に登板し、速球は最速150キロを計測。順調にエースとして活躍しますが、なかなか指名候補に挙がりません。
社会人5年目となった23年、補強選手として出場した都市対抗で前回王者のENEOS相手に勝ち投手になるなど、大舞台で活躍を見せたことが評価されるようになります。
高校日本代表時の森田駿哉
NPB側の球団が再び森田投手を調査し、遅咲きながら、同年のドラフトで巨人から2位指名を受け、じつに9年かかってプロ入りを叶えました。
ただ昨年も左肘のクリーニング手術で、一軍未登板。今年も厳しい立場かと思いました。それでも二軍で地道に実績を重ね、14試合すべて先発し、6勝5敗、72.2回を投げ、防御率3.59とローテーションを守ったことを評価され、7月30日に昇格しました。プロ初登板となった31日の中日戦ではサヨナラ負けとなり、負け投手からスタートしましたが、安定した投球を続け、8月6日のヤクルト戦でプロ初先発し、6回無失点の好投でプロ初勝利。8月12日の中日戦でも7回無失点の好投で、2勝目を手にしました。
キャリアを重ねた分、投球には安定感がありました。常時140キロ後半の速球、140キロ台のツーシーム、130キロ後半のフォーク、120キロ前半のスライダーで打者を翻弄するパワーピッチングは、高校時代の森田投手はスライダー主体の投手でしたので、大きく変わりました。この試合では高校日本代表でバッテリーを組んだ岸田行倫捕手(報徳学園)がマスクを被り、さらに岸田選手が2ランホームランを打つ援護もあり、勝利となりました。
社会人5年を経てプロ入りとなりましたが、2位指名された期待に応えつつあります。森田投手の快投を特集した映像には、高校時代の活躍を知るファンから称賛のコメントが相次ぎました。
高校を卒業して11年かけて素質を開花させた森田投手を見ると、伸び悩む若手投手の励みになったと思います。腐らず、怪我をせず、自分のパフォーマンスに磨きをかけていけば、いつかブレイクすると。
世代的にいえば、オリックスでも活躍する田嶋投手に並ぶ素質を持った好左腕。活躍を待望する声が多かったです。
この世代では森田投手より先にプロに進みながらも、現役を引退した選手も多くおり、森田投手同様、社会人野球に進んで引退した選手がいます。
別のキャリアを歩む同世代が多い中、森田投手はこれからプロ野球選手としてキャリアの最盛期を迎えてほしいと思います。