(11日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 県岐阜商6―3日大山形) 七回1死満塁。打席に向かう県岐阜商の4番・…
(11日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 県岐阜商6―3日大山形) 七回1死満塁。打席に向かう県岐阜商の4番・坂口路歩(ろあ)一塁手(3年)は藤井潤作監督から声をかけられた。「ここで打つのが4番やぞ」
よく分かっていた。この回の攻勢でリードを3点に広げていた。「絶対に追加点がほしい場面でした」。フルカウントまで粘り、「単打でいい」と6球目の直球を振り抜くと、試合を決める中前2点適時打になった。
185センチ85キロの恵まれた体格。1年秋に4番に座り、主軸を担ってきた県岐阜商の看板選手だ。
春の甲子園に出場した祖父・清貴さん(73)、父・輝光さん(43)も同校野球部出身という「県岐阜商一家」で育った。小学生の時から県岐阜商志望だったという。「父も祖父もずっと『甲子園、甲子園』でした」
だが、必ずしも順風満帆ではなかった。
昨夏の岐阜大会は不振に陥り、4番を外れ打順が下位になることも。チームも決勝で敗れ甲子園を逃した。
昨秋には腰を痛めて約3カ月リタイア。顔面骨折に続き5月には死球で左腕を骨折。「けが続きでした」。夏の岐阜大会には何とか間に合わせたが、影響からか本塁打2・打率2割2分7厘は本来の実力からは物足りなかった。
その姿を知る祖父と父はスタンドで見守った。輝光さんは「この経験で、チームの中心としてプレーできるのは当たり前じゃないと感じながら試合に臨めているのではないか」と推し量った。
坂口選手が小3の時からキャッチボールやティーバッティングを指導してきた清貴さんは「普段通りやればいい結果が出る」と孫を信じた。
坂口選手はこの日朝、2人から励ましのメッセージをSNSで受け取っていた。試合中にはスタンドの輝光さんに気づいた。「それで気合が入りました」
大舞台で監督、祖父、父の期待に応える4番の務めを果たした。
「おじいちゃんは毎日練習に付き合ってくれて、お父さんは設備を全部整えてくれて。やっと恩返しができました」。笑顔で白い歯を見せた。(高原敦、鎌形祐花)