(第107回全国高校野球選手権大会2回戦 豊橋中央―日大三) 豊橋中央(愛知)の背番号16・前川唯一(ゆいと)投手(3…
(第107回全国高校野球選手権大会2回戦 豊橋中央―日大三)
豊橋中央(愛知)の背番号16・前川唯一(ゆいと)投手(3年)は、名前の通り「唯一無二」の投球フォームを持つ。
ただでさえ珍しい右のアンダースロー。さらに目を引くのが、投球前の体の向きだ。
一般的な右投手は、打者と対面するか、三塁側を向いて構える。しかし前川投手は、捕手とのサイン交換が終わると、体をくるりと反転し、打者に背を向ける。
その姿勢から捕手へボールを投げ込む。球種は最速115キロの直球とスライダー、チェンジアップ。低いリリースポイントから一度浮き上がり、打者の手元で沈む独特の球筋が強みだ。
なぜ、このフォームにたどり着いたのか。
入学時は外野手だった。1年の秋、出場機会を求めてアンダースローの投手に転向。最初は投球動作の途中で体をひねって打者に背中を向ける「トルネード投法」だったが、制球難に苦しんだ。
今年5月、野球経験者の父の助言で、最初から背中を向ける現在のフォームを試してみると、制球が安定した。愛知大会でも2試合に中継ぎで登板し、無失点と結果を出した。
167センチ58キロと、チームの中でも小柄。入学時はランニングにもついていけなかったが、愚直に練習を重ね、気付けば先頭を走れるようになった。萩本将光監督は「こういう努力家は、ベンチに入れたくなる」という。
「唯一無二」のサブマリンは、甲子園でも、いつでもマウンドに上がれるよう準備する。「ピンチの場面を抑え、チームに流れを呼び込みたい」(松本敏博)