第107回全国高校野球選手権大会に出場した明秀日立は、1回戦で聖隷クリストファー(静岡)に1―5で敗れた。3年前、夏の…

 第107回全国高校野球選手権大会に出場した明秀日立は、1回戦で聖隷クリストファー(静岡)に1―5で敗れた。3年前、夏の甲子園に出場した先輩たちの背中を追いかけた選手たち。同じ舞台に立ったが、初戦突破はならなかった。強さともろさ。いまのチームの歩みを表すかのような試合だった。

 始まりは、2022年に先輩たちが夏の甲子園初出場を決めたことだった。

 そのときのチームに憧れ、全国から能力の高い選手が集まった。金沢成奉(せいほう)監督も「この代は日本一も狙えるぞ」と口にしたという。実際、現在のチームには最速145キロ近い直球を投げる投手が3人もそろった。

 ところが、選抜大会出場につながる昨秋の県大会は準々決勝で敗退。金沢監督が言う「屈辱からの1年」が始まった。

 1日に素振り千本などの練習をこなし、県4強にも入れない状態からの脱却をめざした。

 そうした努力で、手に入れた強さ。しかし、想定外が起こる。

 茨城大会準々決勝の岩瀬日大戦で、主将の能戸輝夢(きらむ)(3年)が左足首を負傷した。金沢監督が「自分のことしか考えない選手が多かった」と言うチームをまとめた屋台骨の戦線離脱だった。

 一方で、主将の負傷でチームの絆が強固になった側面もある。選手たちは打撃用手袋に「きらむの分まで」などと書いて臨んだ。その上でつかんだ甲子園の切符だった。

 甲子園入りしたあとも、能戸の状態は良くならなかった。周囲は、万全な状態で試合に出てもらおうと、一つでも多く勝つ思いを強くした。

 初戦の相手である聖隷クリストファーは、最速145キロ超の直球を投げる好左腕高部陸(2年)を擁するチーム。選手たちは、本来のマウンドから約4メートル手前で打撃投手に投げてもらい、打ち込んだ。左腕の丹羽桜太(3年)が、攻略につながればという思いで、何度も全力で投げた。

 9日の試合では要所を抑えられた。三回に有住陽斗(はると)(3年)がファウルで粘った末に放った左前適時打での1得点のみに終わった。

 ただ、初回に先制されたが、序盤に追いつき、中盤まで1点差に食らいついた。八回に離されても、九回の攻撃であきらめない姿勢を見せた。

 1番打者だった脇山琉維は2年生だ。背番号1を背負った中岡誠志郎(3年)は「この景色を見るため、後輩たちは頑張ってほしい」とエールを送った。

 茨城勢の夏の甲子園の成績は、59勝69敗と負け越している。2003年に常総学院が全国制覇し、23年には土浦日大がベスト4に入った。県北地区の明秀日立がさらに強くなれば、県全体の底上げにつながるはずだ。

 秋季関東地区高校野球県大会の地区1次予選は、18日に開幕する。

     ◇

〈おことわり〉当初配信した記事で、2023年に土浦日大が「ベスト8」に入ったとしていましたが、正しくは「ベスト4」でした。記事を修正しました。(後藤隆之)