ある者は子供のときからのあこがれ、ある者は己の力の挑戦-。今年もドラフト会議の季節がやってきた。BIG6.TV では学生野球の聖地とも言える神宮球場で、4年間にわたる激闘を繰り広げてきた東京六大学野球の強者たちの中から、プロ志望届を提出した…

ある者は子供のときからのあこがれ、ある者は己の力の挑戦-。
今年もドラフト会議の季節がやってきた。BIG6.TV では学生野球の聖地とも言える神宮球場で、4年間にわたる激闘を繰り広げてきた東京六大学野球の強者たちの中から、プロ志望届を提出した選手にスポットを当ててその想いに迫る。第6回は早大・三倉進選手。投手として入部するも、2年時から外野手に挑戦。試行錯誤を繰り返しながら、たゆまぬ努力でレギュラーの座をつかんだ(成績はすべて10月25日現在)。

◎プロ志望届を提出した思い
「4年後は自分が(プロに)行かないといけないと思った」

夢は小学校入学前に始まる。ナゴヤドームで初めて観戦したプロ野球。球場に集まった大勢の観衆の中で、華々しくプレーする選手たちに魅了された。野球を始めた三倉は中学、高校と続けていくなかでも「プロ野球選手」への思いは変わらなかった。
「小学校に入る前、ナゴヤドームに中日対阪神の試合を見に行きました。野球観戦に行くのは初めてでしたが、そこで見た世界がすごく印象的だった。中学校のときまでは、プロ野球選手にただあこがれていた。でも、高校で同級生の外野手だった関根(大気、現横浜)がドラフトで指名されて、4年後は自分が行かないといけないと思いました。早稲田入部後も1年生のときに中村(奨吾、現千葉ロッテ)さん、有原(航平、現日本ハム)さん。一昨年も続いて、去年には石井(一成、現日本ハム)さんが指名されて、来年はついに自分の番だと感じました」

愛知の名門・東邦高校では、主戦投手として投げるかたわら、野手としても高校通算36本塁打を記録。引退後、進路の選択肢の一つとしてプロ野球もあったが、4年後をにらんで大学進学を決意した。
「理由は3つあって、1つはまだ自分は高校生レベルだという思いがあった。実力も足りていないと感じたので、プロに行くことよりも進学を優先しました。大学の候補もいくつかありましたが早大には偉大な先輩がいて、野球に関わらずさまざまな競技でアスリートを輩出している印象。トップレベルの中で、自分を鍛えたいと考えたのが2つ目の理由です。最後は兄も4年間、早稲田の野球部だったこともあって早慶戦に足を運んでいました。独特の雰囲気の中で、早稲田と慶應にしかできない特別な試合なので、自分も出場したいと思ったんです」

早大野球部には投手として入部したが、当時は有原をはじめ下級生にも好投手がずらりと揃っていた。そんなときに監督に打者挑戦を打診されたこともあり、外野手転向を決意する。しかし、それは苦難の道のりの始まりでもあった。
「監督に『打者にも挑戦してみないか』という話をいただいたこともありますが、当時の4年生投手は有原さんだったり、高梨(雄平、現楽天)さん、3年生には吉永(健太郎、現JR東日本)さんもいて、レベルの高い選手が多かった。先輩たちと比較したときに4年間で投手一本に絞るよりも、打者に挑戦したほうが、少しはプロに進む可能性が広がるのかなと。2年生から野手にチャレンジしたんですけど、最初は金属と木製バットの違いに悩みました。打球を飛ばそうと思っても飛ばない。逆に飛ばそうと意識しなくても飛んでしまう日もありました。外野守備練習でも最初に思ったのが「俺、ヘタクソだな」と。ノックに入ったときに、周りの先輩のレベルがとても高かったのを覚えています」

◎4年間挑み続けた神宮の舞台とは
「1球、1勝を積み重ねていくことが大事だと学んだ」

レギュラーの座をつかんだのは3年生の春。主にクリーンアップを担い、全試合に出場。外野手転向から約1年間。この期間は、三倉にとって試行錯誤の毎日だった。
「いま考えたらもったいなかったですけど、打球を飛ばすよりも打率を残した方がいいんじゃないかという考えにブレた時期もありました。レベルアップするために、ほとんどの先輩や同級生からバッティングについてアドバイスをもらったりもした。ノックも時間が限られているので、フリーバッティングの時間や自主練習のときに、試合と同じような‟生きた打球”を捕ることに取り組むなど、試行錯誤した期間でしたね」

決して遠回りの4年間ではない。試行錯誤を重ねた末に三倉は「とにかく努力、日々同じことでもいいので積み重ねていくこと、加えて1球、1勝、勝ち点1を大事にする大切さを学びました」と語る。高校では同級生が、大学では先輩たちがプロの世界へ飛び込んで行った。今度は自分の番だ。
「1球、1勝、勝ち点1。これらを大切にすることと、とにかく努力。同じことでもいいので積み重ねていくことが大事だと、日々の練習や神宮でのリーグ戦を通じて学びました。プロ野球は厳しい世界で弱肉強食だと思うんです。常にレベルアップしないと食っていかれる印象。それでも高校や大学を通じて、身近な同級生や先輩がプロに進む姿を見てきました。自分も夢を叶えて次のステージでプレーできればうれしいです」

■プロフィール
三倉進(みくら・しん)1995年7月26日生まれ。左投左打。178㎝85㎏。東邦(愛知)。リーグ戦通算41試合出場124打数21安打1本塁打11打点、打率.169。名門・東邦高校では東海屈指の左腕として注目されると、早大進学後は外野手に転向して3年春にレギュラーの座を掴む。走っても同季に4盗塁(通算11盗塁)を決めるなど、チームトップクラスのスピードを兼ね備える。