「力は頭一つ抜けている」との前評判通りだった。第107回全国高校野球選手権鳥取大会(鳥取県高校野球連盟、朝日新聞社主催…

 「力は頭一つ抜けている」との前評判通りだった。第107回全国高校野球選手権鳥取大会(鳥取県高校野球連盟、朝日新聞社主催)は28日、鳥取城北が出場23校の頂点に立って連覇を果たし、幕を閉じた。敗れ去った22校に思いをはせながら、担当記者として大会を回想する。

 私は「強豪」ではないチームに心を引かれる。7年ぶりの単独出場を果たした日野。柳原大貴監督や2年生の堀内瑶太主将が懸命に学内で声をかけ、バドミントン部や射撃部から助っ人を集めて11人で出場にこぎつけた。高校から野球を始めたという部員も多く、初戦で0―24で敗れた。だが、選手らの笑顔とさわやかな表情が印象的だった。

 柳原監督は「勝利も大事だが、彼らを見ていると『成長』が見える」「スポーツ本来の楽しさがある、と気付かせてくれた」と話した。来年が楽しみだ。

 今大会、「成長」が高校野球の重要なキーワードだと改めて感じた。

 米子工の三好涼太部長は敗戦後、「甲子園だけがすべてじゃない。どれだけ人間として成長できるか」と選手に諭した。倉吉西の古林貴樹主将も、倉吉東の屋内銀太主将も、鳥取商の石見秀太主将も、主将を体験して「人間として成長できた」と話した。

 敗れた22校には、その試合ごとにスタンドから温かい拍手が送られていた。春夏の甲子園連続出場を目指しながら初戦で敗れた米子松蔭の選手の一人は、相手の鳥取商メンバーに「絶対甲子園に行けよ!」と泣きながら叫んでいた。涙と声援と拍手が、球児らをさらに成長させたに違いない。(奥平真也)