10月26日に行なわれるプロ野球ドラフト会議(グランドプリンスホテル新高輪)。今年は清宮幸太郎(早稲田実)を筆頭に…

 10月26日に行なわれるプロ野球ドラフト会議(グランドプリンスホテル新高輪)。今年は清宮幸太郎(早稲田実)を筆頭に野手の好素材が目立つが、どの球団も好投手は喉から手が出るほどほしいに違いない。

 そこで、50歳まで現役生活を続けた球界のレジェンド・山本昌氏に、気になるドラフト候補12名のプレーと将来性を分析してもらった。

 昨年の同時期に山本昌氏が絶賛した濱口遥大(DeNA)や藤平尚真(楽天)は、早くもプロで結果を残しているが、今年もその眼鏡にかなう投手はいたのか?



甲子園出場経験はないが、150キロを超すストレートが魅力の青藍泰斗の石川翔

石川翔(青藍泰斗高/右投左打)

「ドラフト1位候補」と評価されるだけのことはある、完成度の高さを感じる投手ですね。テークバックを大きく取って、体重移動がスムーズにできるフォームですし、体に力があるのもいい。今夏の栃木大会は踏み出し足の左足首に重度のねんざを負いながらの投球だったそうですし、まだまだ伸びしろも感じます。あえて指摘するなら、体を上下にあおって投げることがあって、そのため高めに抜ける球があること。それと、左肩がより捕手に近づいて体重移動の距離が伸びれば、もっといい球が投げられるようになるはずです。



土屋恵三郎監督の指導のもと高校3年間で急成長を遂げた星槎国際湘南の本田仁海

本田仁海(星槎国際湘南高/右投左打)

春に私の母校(日大藤沢高)がやられたので、この投手はよく知っています(笑)。体の線は細いですが球にスピードがあるし、これから大化けする可能性を秘めた好素材だと感じます。体の軸がしっかりとホーム方向に向いているのもいいですね。少し気になるのは、テークバックの始動が遅いこと。グラブと利き手を割るタイミングが軸足のヒザが折れてからと遅いので、テークバックで手が高い位置まで上がってこないんです。高い位置でリリースできれば、ボールに角度ができてくるはずです。



4年秋のリーグ戦では37イニング60奪三振の快投を演じた仙台大の馬場皐輔

馬場皐輔(仙台大/右投右打)

馬力を前面に出した投げ方をしていて、まさしく「馬場」という苗字がしっくりくる剛腕だと思います。粗削りですが、これだけ上から叩きつけて150キロを超える球を投げられると、打者は対応しづらいはず。また、フォークなど縦系の変化球も投げられる投げ方をしていますから、これから楽しみです。プロだと短いイニングを任されるほうが向いているかもしれません。現状のままでも、ある程度通用するでしょう。先発として活躍するためには、もう少しフォームの確実性や繊細さが身につくといいでしょうね。



最速152キロのストレートを誇る東都大学リーグ屈指の本格派、中央大の鍬原拓也

鍬原拓也(中央大/右投右打)

体は大きくありませんが、非常にまとまった投球フォームが印象的です。名門のエースらしく試合を作ることに長けており、最速150キロを超えるスピードは今後さらに伸びていく可能性を感じます。大学生として上位の実力を持っていることが伝わってきますね。ただ、プロとしてはこのまとまりが、かえって打者の恐怖心を削ぐ可能性があるかもしれません。フォーム的には先発適性を感じるので、ローテーション投手として活躍するためにも、落ちるボールをより磨いていく必要があると感じます。



190センチの長身を生かし角度あるボールを投げ込む岡山商科大の近藤弘樹

近藤弘樹(岡山商科大/右投右打)

この投手はボールの角度がすごくいいなぁ……。高い位置から振り下ろされるので、打者は相当な角度とキレを感じるはず。まだ粗削りですが、とても面白い素材です。体を縦に使う投げ方なので縦系の変化球もよく落ちますし、意外と変化球を器用に扱えるのも好ポイントですね。惜しいのは、左足がアウトステップすることでシュート回転が強くなること。左足が地面に着いて、腰が回り切る前に左肩を逃がして(開いて)投げにいくので、ボールがシュートしてしまう。このクセを修正できれば、将来的にプロで素晴らしい投手になれるはずです。



サイド気味からキレのいいボールを投げ込む明治大の齊藤大将

齊藤大将(明治大/左投左打)

桐蔭学園高時代から面白いサウスポーがいると、存在は知っていました。腕が出てくる位置が低くて変則タイプに見られがちですが、球のキレがあって楽しみな投手です。特徴的なのは、テークバックを大きく取れて腕の振りが鋭いこと。左打者にとっては背中側から腕が出てくるようで、相当に打ちづらいでしょう。縦の変化球を扱いにくい体の使い方なので、スライダーなど横の変化球のキレがカギを握るはず。右打者の外角にシンカー・チェンジアップ系の球種を高い精度で投げられるようになると、プロの右打者も抑えられるでしょう。



大学ナンバーワン左腕の呼び声が高い立命館大の東克樹

東克樹(立命館大/左投左打)

いいチェンジアップがあって、スライダー、カーブを使って両サイドを投げ分けることができる。体は170センチと小さいですが、現時点でもプロで勝てる投手の要素を備えています。即戦力になるだけの力がある、非常にまとまりがある素晴らしい投手です。時折、右肩の開きが早くてシュート回転すること、体を上下にあおって顔が天井を向いて球が高めに浮くことなど課題はありますが、プロで体を強くできればさらに良くなるはずです。



3年春にリーグ戦で2勝をマークするなど東大のエースとして奮闘した宮台康平

宮台康平(東京大/左投左打)

「東大」という話題性や色眼鏡を抜きに、素晴らしい才能を持った投手です。左肩を痛めたことでフォームを修正し、4年生になってから一進一退の状態が続いているようですが、ほしがる球団が多いのも理解できます。今はまだ体が弱いこともあって体が流れたり、腕の振りが一定ではありません。それと現在はテークバックを小さくしていますが、もっとのびのびと腕を回したほうが肩の負担は小さくなるはずです。即戦力というより、プロで力をつけて花開くタイプでしょう。



昨年の日本選手権で151キロをマークした日立製作所の鈴木康平

鈴木康平(日立製作所/右投右打)

千葉明徳高、国際武道大と着実に力をつけてきた右腕ですね。長身で上から投げ下ろす角度がある上に、腕の振り以上にスピードガンの数字が出ているように感じるので、打者は捉えるポイントがわかりにくいはずです。気がかりは、左肩がホームベースへと寄っていかずに胸が前へ向いてしまうこと。これでは球筋が暴れて、コントロールが安定しません。今夏の都市対抗でも初回に大量失点しましたが、コンスタントに低めに球を集められるようになれば、プロでも活躍できる投手になります。



常時150キロを超すストレートが武器の本格派右腕、ヤマハの鈴木博志

鈴木博志(ヤマハ/右投右打)

まずバックスイングが大きくて、雄大なフォームが印象的ですね。普通に投げて、当たり前のように150キロ台が続く投手はなかなかいません。社会人ではリリーフ中心に起用されているようですが、私はプロでは先発投手として面白いと感じています。球の力は十分なので、ひとつ軸になる変化球があればスケールの大きな先発投手になれるはず。とくに縦の変化球がほしいですね。また、時折ヒジが下がってリリースが頭から離れ、腕の振りが弱くなることもありますが、これはプロで体を強くする中で修正できること。まだ高卒3年目ですから、これからぐんぐん伸びていく投手でしょう。



今年の都市対抗で2試合連続完封勝利を飾ったJR東日本の田嶋大樹

田嶋大樹(JR東日本/左投左打)

高校時代から知っていますが、彼が飛び抜けていいですね。社会人の目玉になるのもうなずけますし、間違いなく1位で消える素材でしょう。スピードや球威で押す「剛腕」というより、ボールのキレと駆け引きで勝負する「勝てる投手」というタイプ。腕の振りがしなやかで、ストレートに打者が差し込まれますし、多彩な変化球も操ることができる。今夏の都市対抗では登板機会が多かったせいか、少し体が重そうに見えましたが、ゲームメークのうまさを感じました。強いて気になる点を挙げるとすれば、腕が出てくる位置がわずかに低いときがあることくらい。完成度の高い左腕だと思います。

寺岡寛治(石川ミリオンスターズ/右投右打)

こういうピッチャー、好きなんだよなぁ(笑)。真上から投げ下ろすので、コントロールが左右にブレることが少ない。上下のコントロールさえつけば、縦系の変化球がよく落ちるフォームだからプロでもリリーフとして活躍できるでしょう。九州共立大時代は野手としてプレーしていたそうですが、投手としての経験が浅くても楽しみな存在です。投球時に頭の位置が一瞬ライン(投手が投げる際に使う空間の幅のこと)から外れるのは気になりますが、修正できればもっとコントロールは良くなるはずです。僕がスカウトなら上位指名でもほしいです。

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 以上の12投手について語らせていただきました。今年のドラフト戦線は「打高投低」と言われていますが、前回の記事でコメントした甲子園出場投手を含めて能力の高い投手はちゃんといると実感します。

 もし自分が監督として指名できるなら、社会人は田嶋大樹投手(JR東日本)。大学生なら近藤弘樹投手(岡山商科大)。高校生は石川翔投手(青藍泰斗高)や以前に評論した阪口皓亮投手(北海高)ですね。田嶋投手は即戦力として一段抜けた実力を持っていますし、近藤投手はアウトステップが気になるものの素晴らしい角度を持っています。石川投手、阪口投手は将来性が非常に高いですね。

 最後に、寺岡寛治投手(石川ミリオンスターズ)もドラフト3位までに残っているなら指名したいと感じた面白い素材でした。私も明日のドラフト会議当日が楽しみです!

【写真一覧】
山本昌がドラフト直前の「エース候補12人」を調査。惚れたのは誰だ?>>