(28日、第107回全国高校野球選手権東東京大会決勝 関東第一7―1岩倉) 今日は自分の日だ。 関東第一の先発マウンドに…

(28日、第107回全国高校野球選手権東東京大会決勝 関東第一7―1岩倉)

 今日は自分の日だ。

 関東第一の先発マウンドに立ったのは背番号「8」の左腕、坂本慎太郎(3年)。強気な投球でチームを甲子園に導いた。

 6点のリードをもらった九回表2死一、二塁。投じた126球目。最後の打者を外野フライに打ち取ると、高々とグラブを突き上げ、マウンドに駆け寄る仲間たちにもみくちゃにされた。

 投打の「二刀流」として引っ張ってきた。決勝の舞台で、四回、先頭打者としてソロ本塁打で貴重な追加点を挙げ、八回にはフェンス直撃の二塁打を放ち、相手を突き放す4点の起点になった。

 投げては得意のカーブを使い分け、8奪三振。五回無死満塁のピンチを併殺、続く六回を3人で仕留め、雄たけびをあげた。「最後まで強い気持ちで投げていた」

 試合の中盤、ベンチで米沢貴光監督に自ら言った。「100球で代えるのはやめてください」

 エースナンバーの石田暖瀬(同)に譲りたくなかった。気迫の投球を見せる坂本に、米沢監督も「いけるところまでいこうと。彼に頼ってしまった」と口にした。

 すべては、あの悔しさを返すために――。

 昨夏の甲子園、京都国際との決勝。延長タイブレークの十回裏2死満塁。京都国際の投手、西村一毅(同)に空振り三振に抑えられ、最後の打者になった。

 「初球の甘い球を見逃してしまった。あそこで打っていたら……」。ずっと後悔してきた。練習試合でも打席に立つと思い出してしまう。なぜ打てなかったのか。以来、初球のいい球は見逃さず、振ると決めた。

 悔しさを晴らすため、再び甲子園へ。だが、その思いとは裏腹に新チームは苦しんだ。昨秋の都大会は帝京に敗れ、選抜大会出場を逃す。今春は東亜学園との初戦でサヨナラ負け。公式戦を経験できない中、ただただ、練習に励んできた。

 ノーシードの今大会は「挑戦者」の気持ちで臨んだ。目の前の1戦1戦を大切にし、全員野球で頂点に立った。

 坂本が突き上げたグラブは、京都国際の西村が使っていたものだ。この春に高校日本代表候補に選ばれた坂本と西村は、合宿の時に互いのグラブを交換し、それをつけて戦ってきた。

 その京都国際も甲子園出場を決めた。坂本は「戦う準備はできている。勝ってこのグラブを返しにいく」。昨夏の甲子園決勝、三振を喫した西村を相手に、今度は自分が三振を奪いにいく。

 再びの聖地。「昨夏の悔しさを晴らす。それは甲子園の決勝しかない」。学校創立100年の夏、自分たちが全国一になる日だ。=神宮(石平道典)