(27日、第107回全国高校野球選手権茨城大会決勝、明秀日立4―3藤代=延長10回タイブレーク) エースの仕事をするし…
(27日、第107回全国高校野球選手権茨城大会決勝、明秀日立4―3藤代=延長10回タイブレーク)
エースの仕事をするしかない――。
延長タイブレークに突入した十回表。強打の明秀日立に2点を勝ち越され、なお2死満塁のピンチが続いた。三回途中から救援マウンドに上がり、力投を続けていた藤代の主戦斉藤駿介(しゅんすけ)(3年)は自信のあるカットボールを狙いどおりに打者の外角低めに投じた。空振り三振を奪うと、ガッツポーズで逆転を念じた。
小学1年生だった2014年、自宅テレビで、甲子園に出場している藤代の選手たちを見た。打撃力にあこがれ、「この舞台に立ちたい」と思った。
中学時代は地元の強豪硬式野球チーム「取手シニア」に所属。レギュラーではなかったが、声をかけあい、主将の成田未来(3年)らと藤代に入学した。目標は自ら活躍して、甲子園に出場することだった。
今大会では栗原大和(2年)との「ダブルエース」と呼ばれ、強豪校を相手に接戦を勝ち抜いてきた。準決勝まで4試合で351球を投じていたが、疲れは感じていなかった。他の学校で甲子園出場を決めた取手シニアの仲間から「甲子園で待っているぞ」と連絡もきていた。この日は栗原の制球が乱れ、救援で序盤から登板することに。直前、成田から「お前らしくいけ」と言われ、うなずいた。「いつもどおりの投球をすればいい」。仲間の声掛けが力投の後押しとなった。直球は130キロ台後半が出て、調子が良いとさえ思えた。決め球の変化球の制球もさえ、137球を投げた。
十回裏、2死から1点を返した直後に打席がまわってきた。相手投手の投じた外角低めのチェンジアップにバットが空を切り、3時間39分でゲームセット。仲間と甲子園出場の夢を追いかけた夏が終わった。
菊地一郎監督は選手全員に「泣いてもいい。堂々としろ。斉藤に感謝だな」。一方、斉藤は「あいつらがいなかったら決勝まで来られなかった。ありがとう」。取材後、成田と熱く握手を交わした。(後藤隆之)