夏の大会が佳境を迎える中、NPB12球団のスカウトたちは連日、球場で逸材たちを視察している。この時期の視察は最終チェック…
夏の大会が佳境を迎える中、NPB12球団のスカウトたちは連日、球場で逸材たちを視察している。この時期の視察は最終チェック。進学表明している選手ではなく、プロ志望の選手たちを優先的に視察している。
21日、関東地区のスカウトたちの目当ては水戸啓明の中山優人投手だった。21日の水城戦が行われたノーブルホームスタジアム水戸には、試合の1時間前から9球団のスカウトが到着し、試合が始まった時には11球団が集結した。
中山は182センチ65キロとかなり細身ながら、常時140キロ前半・最速146キロの速球、120キロ後半のスプリット、120キロ前半のスライダーを操る。最速は高校生右腕としては突出したものではないながら、なぜこれほどのスカウトが集まったのか。
この試合で完全試合を達成した星の強さを持つ中村に迫る。
体は完成していないのに高パフォーマンスできるのが魅力
まず中山の魅力は伸びしろである。現代はトレーニングの発達で、大学生、プロの選手に負けないような体格を持った高校生はいるが、中山は182センチ65キロ。入学当時は175センチ59キロと、さらに細かった。高校では睡眠時間を増やし、ウエイトトレーニングを中心に行い、サイズアップしてきたが、他のドラフト候補の中でも細い。
この細さながら、高いパフォーマンスを見せている。投球フォームは沈み込みが小さく、高い重心から振り下ろす投球フォームは、力感を全く感じない。肩、肘もしなかやかで、高校3年間で故障はないという。
ソフトバンク・武田 翔太投手(宮﨑日大)を彷彿とさせるフォームである。ストレートは常時140キロ前半を計測し、この試合での最速は145キロ。春に比べ、球速は順調にアップしているという。ストレートのコマンド力も高く、内外角へコントロールできている。投球フォームは高校に入って、大きな変更はなく、フィジカル強化で球速を伸ばしてきた。
変化球は120キロ後半のスプリット、120キロ前半のスライダーの2球種。特にスプリットの落差は凄まじく、強打者揃いの水城打線から三振を次々と奪っていた。
さらに体ができれば、どれほど速くなるのかと期待を抱かせる。
現在のプロ野球を見ると、高校卒業後から球速を伸ばした投手が多い。昨年の日本ハムドラフト1位の柴田獅子投手は高校時代の最速は149キロだったが、現在は154キロまで速くなり、安定して140キロ後半を出すまでになった。楽天2年目の191センチ右腕・大内 誠弥投手は高校時代の最速は144キロで、現在は152キロまでスピードアップし、プロ初勝利を挙げた。どの球団も高卒投手の出力を高め、パフォーマンスアップできる手法は持っている。
各球団のスカウトは中山の数年後を見据えて視察しているのだ。また、関東地区でこうした右腕の存在が少ないのも大きいだろう。
数年後には、常時140キロ後半・マックス150キロ台を出す先発型右腕に育つ可能性が高い。他のドラフト候補に挙がる投手と比べても青写真が描きやすいのも、評価が高いポイントだ。
水戸啓明を率いる元中日の春田剛監督は「どの球団さんも伸びしろ、将来性の高さを評価しているという声をいただきます。私も彼については卒業して、さらに体ができた時、もっと速い球を投げられると思います」と期待を寄せる。さらに春田監督は中山の気持ちの強さもアピールした。
「一番甲子園に行きたい気持ちを持っている子です。あとは普段、投球練習する中で、私も打席に入って球筋、コースを見ながら、『今のは打たれる』と本人に返すと、『抑えています!』と強気に返ってくるんですよね」
マインドの強さも魅力的だ。
スカウトは手応えを掴んだのか、試合後半には殆どの球団が会場をあとにした。その後、中山は快挙を達成する。
8回終わってパーフェクト。水戸啓明ベンチはパーフェクトを意識させないように、なるべく口にしないようにした。中山は9回、二者連続三振であと1人にすると、最後の打者はフルカウントから痛烈なニゴロ。これを水戸啓明のセカンド・本城 海輝が好捕し、ギリギリでアウトとなった。笑顔で整列に加わった中山はスコアボードを見て、完全試合を実感したという。
11球団のスカウトが集結する中、この春4強の水城相手に、14奪三振、完全試合という最高のパフォーマンスを発揮した中山の評価はうなぎ登りだろう。
今年の関東地区では、156キロ右腕・石垣元気投手(健大高崎)が最注目されているが、この夏、指名有力な高校生右腕が加わった。