(21日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会準決勝 旭川志峯2―1帯広大谷) 「打ち取った」 旭川志峯に同点に追い…

(21日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会準決勝 旭川志峯2―1帯広大谷)

 「打ち取った」

 旭川志峯に同点に追いつかれた八回2死三塁。マウンドの帯広大谷・泉映甫投手(3年)は初球、億貞壮汰選手(2年)の一塁手方向に転がった打球を見た。

 素早く一塁カバーに走りながら捕球し一塁を踏む。打者も一塁に頭から滑り込む。セーフ。その間に三塁走者が生還。これが決勝点となった。

 昨秋はエースナンバーだったが、春にチーム事情で捕手にコンバートされ背番号2になった。「本当は投手がやりたくて悔しかった」。春季大会は白樺学園戦で、救援で捕手から登板したが、腕の振りが小さくなり、本来の投球ができなかった。結果は1点差で敗れた。

 「投手は自分じゃなければダメだと思われるようにならないといけない」。悔しさを胸に、毎日走り込みを30本続けた。大リーグ・ドジャース山本由伸投手の動画を参考に、棒を投げたり、大きめのボールを投げたり。練習を重ねてフォームを取り戻した。

 結果は今大会で現れた。地区代表決定戦の帯広緑陽戦。初回に4点先行される大劣勢だった。泉投手は一回2死からロングリリーフ。大逆転の原動力となった。準々決勝の旭川明成戦では七回から救援。延長タイブレークにもつれこむ激戦で逆転打を許さない力投をみせた。

 この日は変化球が決まった。先に1点をとってもらい、逃げ切りたいという思いを持ちつつも、ただ、楽しもうと意識して投げた。旭川志峯に7回まで三塁を踏ませなかった。

 試合後、泉投手は「抑えられなくて申し訳ない」と言葉を詰まらせながらも「3年間で一番楽しくできた」。逆転に次ぐ逆転で、勝ち上がってきた帯広大谷の夏が終わった。(中沢滋人)