(14日、第107回全国高校野球選手権京都大会2回戦 花園2―1洛星)  1―0で迎えた九回表2死満塁。代打を告げられ…

 (14日、第107回全国高校野球選手権京都大会2回戦 花園2―1洛星) 

 1―0で迎えた九回表2死満塁。代打を告げられた花園・野村迅平(じんぺい)さん(3年)の名前がコールされると、スタンドが大きくわいた。「準備はしていたけど、まさかあの場面とは」。2球で追い込まれると、山本隼一郎監督がタイムを取り、主将の明石譲生(ゆい)さん(3年)が野村さんに声をかけた。「今までやってきたんやから、自信持って振れ。誰も責めへん」

 野村さんは静かに深呼吸し、バットを握り直した。1ボール2ストライクからの4球目、思い切り振り抜いた打球はレフト前へ。三塁走者に続き、二塁走者も一気にホームイン。逆転タイムリーとなり、野村さんは一塁ベース上でひざをつき、こらえきれず涙を流した。

 昨秋は一塁のレギュラーだったが、守備のミスなどから以降は控えに。それでも努力をやめず、ほぼ毎日、父・博久さんとバッティングセンターに通った。「お金もかかっていたと思うので、結果で恩返しがしたかった。報われたなって思いました」

 スタンドで見守った博久さんも、「最後の打席になるんじゃないかと思っていた。とにかく、ほっとしました」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 試合後、山本監督は「あの場面は3年生の野村にかけた。本当によく打ってくれた」と振り返り、目には涙を浮かべていた。(木子慎太郎)