2連敗の負の流れ変える活躍「監督が使ってくれたから『やってやろう』と」 負の流れを変えたのは、今季わずか2試合にしか出場…
2連敗の負の流れ変える活躍「監督が使ってくれたから『やってやろう』と」
負の流れを変えたのは、今季わずか2試合にしか出場おらず、1本の安打も打っていない男だった。20日、ヤフオクドームで行われたクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージ第3戦。ソフトバンクにファイナルで最初の白星を運んできた1人が、この日出場選手登録されたばかりの城所龍磨外野手だった。
右脇腹痛の柳田が不在となった外野手陣にあって、城所はCSメンバー入りの競争に、一度は敗れていた。18日の初戦に登録されたメンバーに、その名前はなし。その椅子を争っていた長谷川勇也、吉村裕基がメンバー入りし、19日の2戦目には江川智晃も登録されたが、背番号23はリストに記されないままだった。
だが、突如として、流れが変わった。20日の第3戦を前にして、前日登録されたばかりの江川が出場選手登録を抹消され、城所が登録された。しかも、いきなりの「2番・中堅」でのスタメン。2連敗と苦境にあったチームの重苦しい空気を打破する起爆剤として、役割を託された。
「いや、もう、監督が使ってくれたから、ハセ(長谷川勇)さん、ポン(本多雄一)さんと『やってやろう』と話していました。元気を出してやってくれと言われていたので、元気良くハッスルしてやろうと思って。試合が終わって『疲れたぁ……』ってなるくらいに出し切ってやろうと思っていました」。
この日は1番に今宮を置き、3番にデスパイネ、そして5番と9番にはCS初スタメンとなった長谷川勇と本多が名を連ねた。城所と長谷川勇、そして本多も長い時間、ファーム生活を送った。シーズン中の悔しさを晴らす千載一遇の機会だった。
守備では球場の空気を一変させる超美技「いっぱいのプレーかな」
工藤公康監督はじめ、首脳陣による抜擢は的中した。1点を先制された初回に今宮が安打で出塁。城所はきっちりと犠打を決めて走者を進め、その後の2得点での逆転につながった。再逆転を許した3回には先頭で放った右翼線を破る二塁打が、内川の再々逆転3ランの呼び水となった。得点には繋がらなかったが、5回にも左翼線を破る二塁打を放った。3打数2安打と打線を活気づけた。
さらに、5回の守備では、先頭ウィーラーの左中間への大飛球に猛然とダッシュし、打球がグラウンドへ落ちる寸前のところでスライディングキャッチ。「逆方向にきそうなイメージがあって、いいスタートが切れた。もうちょっと(落下点に)真っ直ぐいけたらよかったですけど、いっぱいのプレーかなと」と振り返るスーパーキャッチ。幾度となく球場の空気を一変させた。
「守備でも素晴らしいプレーをしてくれたし、あれだけのプレーができるというのは、よく今日の試合に備えてくれたと思います」。CSメンバーへの昇格、そして即スタメンを決断した工藤公康監督は、こう城所を称えた。打撃練習などでの好調さを買われての昇格だったことに「何で使ってくれたのか分からないけど…」とした城所は「見てくれていたんですね」と言う。
昨季は交流戦MVPに輝いた城所だが、今季は4月4日の楽天戦(Koboパーク)で途中交代で守備に就いただけで、ファームに降格。1軍に戻ってきたのは、優勝が決まった後、ペナント終了が目前に迫っていた10月6日の楽天戦(ヤフオクD)だった。この時にようやく今季初先発。でも、3打席凡退で打率.000に終わった。
「則本はすごい投手なので、腹をくくってやろうと。使ってもらったのに、弱気じゃ、使った方も納得できないだろうし。応えたいと思っていた」
もらったチャンス。何とかしたいという一心だった。
「まだ1勝しただけ。明日は明日の風が吹くので」と、試合後すぐに気持ちを切り替えていた城所。だが、この男の活躍で、風向きは確実に変わった。リーグ王者を覆っていた重苦しい空気は、どこかに吹き飛んだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)