(5日、第107回全国高校野球選手権東東京大会、二松学舎大付13―0両国=五回コールド) 一回裏に打者一巡8点の猛攻を受…
(5日、第107回全国高校野球選手権東東京大会、二松学舎大付13―0両国=五回コールド)
一回裏に打者一巡8点の猛攻を受け、二回裏。両国の主将、小坂康太(3年)は観客の多さに緊張しつつ、公式戦初のマウンドに向かった。普段は一塁を守るが、昨夏の東東京大会で4強の強豪に対峙(たいじ)するために、佐藤精一監督が考えた「奇策」だった。
ひじがやや下がる投げ方で、球が変則的に動く。投手ではないからこそ、ひょっとすれば、そこがはまるかも――。そんな監督の思惑に呼応するよう、回を重ねるごとに失点は縮小し、四回にはついに三者凡退の無失点に抑えて期待に見事、応えた。
小学3年生のころ、野球好きだった父の康之さん(51)に連れられて週末、キャッチボールを始めた。最初は飛んでくるボールが怖かったが、だんだんと自信がついてきて中学から野球部を選んだ。一貫校の高校では部員が他部に行き、残った佐藤悠真(同)と2人でチームをもり立ててきたが、部員不足に苦しんだ。連合チームでの試合が続いたが、今春に1年生が9人入り、悲願の単独チーム出場をかなえた。
一塁スタンドへ応援に駆けつけた両親の声に一段と熱がこもったのは、13点差で迎えた五回表。先頭の佐藤が四球を選んで出塁したが、4点を返さなければ、この回でコールド負けしてしまう。「絶対に打って、佐藤にホームベースを踏ませるぞ」と気合を入れて打席に立った。
ただベンチから出たのは、バントのサイン。みんなで4点を、と気持ちを切り替えて2球目の外角直球を一塁前に落とし、初めて得点圏へ走者を送ることに成功した。
それでも後続が続かず、試合には負けた。だが終始、笑顔は崩れなかった。一緒に頑張ってきた後輩たちが、最後まで勝つことを諦めず、声を張りあげている姿がうれしかったから。「悔しいより、すがすがしい思いが一番。活発で良い子たちなので、今年は1回戦で敗退しましたが、来年は2回戦以降も勝ち進んで行ってもらいたいな」と目を細めた。
そんな両国のチームプレーを見ていた二松学舎大付の主将、日笠雅凰(まお)(同)は試合後、「試合に臨む姿勢、全力でプレーすることなど、教えてもらうところがあった。本当にいいチームだ」とたたえた。(武田遼)