(5日、第107回全国高校野球選手権静岡大会1回戦 袋井21―5清水西=5回コールド) 「楽しんでいこう」。清水西主将…

 (5日、第107回全国高校野球選手権静岡大会1回戦 袋井21―5清水西=5回コールド)

 「楽しんでいこう」。清水西主将の山本颯也捕手(3年)がマウンドに集まった仲間に言った。

 スクイズで1点先制した直後の一回裏の守り。無死一塁から2者続けてバントからの内野安打を許し満塁に。初戦でガチガチに緊張し笑顔がなくなっていたチームメートにそう伝えると、ようやく笑顔が戻った。このイニング8失点。ベンチに戻った山本選手が叫んだ。「まだ、楽しむのが足りない!」

 三回裏、3点を失って17点差をつけられ、なお2死二、三塁。さらなる失点を覚悟した鋭い当たりを、鍋田将真右翼手(3年)がスライディングキャッチした。味方の好プレーに、一塁側の応援席からとどろくような歓声が上がった。攻守交代でベンチに戻る仲間は皆、笑顔であふれていた。

 春の大会は部員が足りず川根と連合チームを組んだ。1年生の入部で9人になり、1カ月前、箏曲部、ソフトテニス部、パソコン部から応援3人が加わり、12人で今夏に臨んだ。

 コールド目前の五回の攻撃前。野村保監督から「こうして、ここに立てたことをよく覚えておけ」と言われ、山本選手はスタンドを見渡した。点差がついても、有志の応援団や川根の選手たちの声援はやまなかった。「応援してくれる人たちのためにも、しっかり頑張ろう」

 1番から始まった最後の攻撃、4番の山本選手も左前安打でつないで1点をかえした。磨いた打撃でチームは9安打5得点を挙げた。「満足いかない結果ではあるけど、悔いはない。一人ひとりいいプレーができて、本当に楽しかった」(斉藤智子)