角田を批評しつつも、揺るぎない信頼を寄せたマルコ博士。(C)Getty Images「(今季中のドライバーの)交代は意味…

角田を批評しつつも、揺るぎない信頼を寄せたマルコ博士。(C)Getty Images

「(今季中のドライバーの)交代は意味がない」

 これはドイツでF1を中継しているスポーツ専門局『Sky』のインタビューにおいて、レッドブルの顧問を務めるヘルムート・マルコ博士が断言したものだ。今季3戦目の日本GPから昇格した角田裕毅が、予選から低迷し、直近4戦連続のポイント喪失と負のスパイラルに陥る中、「(リアム・ローソンとのシート交代は)絶対に正しい。ローソンは完全に消耗していたし、数戦休む必要があった」とする“残留宣言”は、興味深いものとなった。

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 昇格以降の9戦で獲得ポイント7と低調なパフォーマンスに終始する角田。巷ではサマーブレイク後のドライバー交代論が浮上し、代役には姉妹チームのレーシングブルズに所属する新人のアイザック・ハジャーや、F2で躍進する17歳の超新星アービッド・リンドブラッドの名がしきりに論じられている。

 そうした状況下でのマルコ博士のアピールは、まさに角田の心理面にも小さくない影響を及ぼしそうである。実際、当人は重鎮の言葉を好意的に捉えている。現地時間7月4日から始まるイギリスGPを前にしたF1公式のインタビューに応じた25歳は、「特に最近はクリスティアン(・ホーナー代表)や、ヘルムートからのサポートをより強く感じている」と強調。「これまでにやったことがない取り組みも許可してくれて、普通ならやらないことも挑戦させてくれる」と充実感を口にした。

 その上で角田はマルコ博士の“残留宣言”を皮肉交じりに語っている。

「2レースで『交代だ』と言われるよりはずっとありがたいね。彼もオーストリアでのレースには満足していなかったけど、サポートはずっとしてくれている。僕の才能やスピードを信じてくれているのは感じるし、僕としてはそれを証明するだけ。率直な人だから、悪かったレースの時は何が悪かったかをズバッと言ってくる。でもそのプレッシャーが、今まで自分でも気づかなかったパフォーマンスを引き出してくれることもある」

 更迭論が繰り返し指摘される現状は苦しい。それでも「レッドブルでは一歩ずつ自信を積み上げる必要がある。これは間違ったアプローチではなく、自分には正しい道だと思っている」と地道な調整をポジティブに捉える角田。そんな日本人レーサーの率直な反応を、海外メディアもクローズアップしている。

 オランダのモータースポーツ専門サイト『Racing News365』は「マルコが信頼を表明していなければ、ツノダはレッドブルでの将来について不安を感じていたかもしれない」と紹介。「ツノダの悲惨なパフォーマンスの直後に発せられた今季2度目のドライバー交代を行うつもりはないという趣旨の発言は、日本人ドライバーに対する82歳の信頼と信念を物語っている」と称賛した。

 今後も目に見える結果が求められることに変わりはない。その中でマルコ博士をはじめとする首脳陣から信頼を寄せられ、精神的な安堵を得たであろう角田がどこまでパフォーマンスを上げられるかは要注目だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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