― 雨の日に痛む、その不調は気のせいではありません ― 「天気が崩れる前に関節が痛くなる」「雨の日は昔のケガがうずく」……

― 雨の日に痛む、その不調は気のせいではありません ―

 「天気が崩れる前に関節が痛くなる」「雨の日は昔のケガがうずく」
…そんな経験をお持ちの方はいませんか?

実は、天候と関節の痛みには関連があるのではないかという声は昔から多くの人々に共有されてきました。現代の医学ではまだはっきりとした因果関係は証明されていませんが、近年では少しずつそのメカニズムの仮説や、気象の変化によって症状が出る「気象病」としての認知も広まりつつあります。

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■ 関節が「気圧の変化」に影響される理由とは?

関節は「関節包(かんせつほう)」という袋のような構造に包まれており、その中には関節液という液体が存在しています。
この関節包は密閉された空間であるため、外部の気圧の変化によって微妙に膨張したり、内部圧が変化したりする可能性があると考えられています。

気圧が下がる(天気が崩れる前)と、関節包がやや膨らみ、関節内の圧が変わり、周囲の神経を刺激して痛みを感じやすくなる…というのが代表的な仮説です。

また、気圧の低下とともに血管が拡張し、炎症や痛みを引き起こしやすくなるという説もあります。

こうした反応は、

・変形性関節症(膝や股関節)
・古傷(スポーツ外傷や術後の部位)
・関節リウマチや痛風

など、もともと関節に問題のある方ほど感じやすい傾向があります。

■ 科学的な裏付けは?

残念ながら現時点では、「気圧と関節痛の因果関係を完全に証明した研究」は存在しません。
一方で、患者さん自身が天気による変化を実感しているケースは非常に多く、実臨床でも見逃せないテーマです。

近年では「気象痛」「気象病」などの言葉が使われ、耳の奥にある「内耳」が気圧センサーのような働きをして自律神経を乱すことで、痛みや不調を引き起こしているのではないかという研究も進みつつあります。

まだ科学的な証拠が確立されていないとはいえ、患者さんの「つらさ」が存在している以上、私たち医療者が真摯に対応していくことが大切です。

■ 自分でできる予防と対策

以下のような方法も日々のケアに有効です。

・天気予報アプリで気圧変化をチェックし、体調の変化を記録する
・規則正しい睡眠・食事・運動習慣で自律神経を整える
・適度な温熱療法(お風呂・カイロなど)で血流を促す
・関節を冷やしすぎないよう、冷房の当たりすぎに注意する

体調に波があると、気持ちも沈みがちになります。
「なぜかわからないけど体が重い、痛い」と感じたときは、気象の変化が関係しているかもしれないという視点をもつことで、自己管理のヒントにもつながります。

■ 最後に

科学的にはまだ未解明の部分が多い「気圧と関節痛」の関係ですが、患者さんの実感として多く報告されており、私たち医療者もその声に真摯に耳を傾けています。

「気のせい」と我慢せずに、一度状態を確認することが大切です。

[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。