投げ終えた直後、すぐさま打席に入る準備を進める大谷。(C)Getty Images ごく当たり前のようにリアル二刀流の歯…

投げ終えた直後、すぐさま打席に入る準備を進める大谷。(C)Getty Images
ごく当たり前のようにリアル二刀流の歯車は、ふたたび動き出した。
去る6月16日、本拠地で行われたパドレス戦で大谷翔平(ドジャース)は先発登板。1イニング、それも28球だけだったが、投手として663日ぶりのマウンドに立った。
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そこから約1か月で3試合に登板した大谷は4イニングを消化。スモールサンプルではあるものの、徐々に1登板あたりの回数も増やしており、先発投手としてのギアも上がってきている。
一方で打者としてもナショナル・リーグトップとなる30本塁打とOPS1.015を記録。パフォーマンス強度を落とさず、「恐怖の1番打者」としての存在価値を示し続けている。
地道な努力の末に、実戦の場に舞い戻った。そんな天才の活躍を「あらためて特別な存在だと気づかされるね」と目を丸くしながら語ったのは、2005年にナショナル・リーグ最多勝を獲得したドントレル・ウィリス氏だ。
米スポーツ専門局『FOX Sports』の解説を務めるウィリス氏は、打席に立つ機会もあった現役時代の経験をふまえ、「特筆すべき要素はホームゲームで1番打者を務めていることだね」と指摘。初回の投球を終えてから息をつく間もなく打席に入る流れを「普通じゃない」と評した。
「例えば、1イニングで25球から30球ぐらいを投げるマウンドもあるかもしれない。そうなると、打席に立つまでにほとんど呼吸を整える時間はない。決して俺を彼と比べるわけじゃないけど、自分もDH制がない時代のナショナル・リーグでプレーしていたから投げてから打席に入る感覚は分かるんだ。俺は三塁打を打った後に、疲れすぎて、マウンドでサインすらまともに見られなかった時があったぐらいだった」
実体験をもとに、投打二刀流を当たり前にこなす大谷の凄みを強調したウィリス氏は、「この先、2番とか3番に打順を下げることを話し合う必要も出てくるかもしれない。水を飲んで、落ち着く時間があった方がいいからね」と打順変更のアイデアを提唱。今のパフォーマンスを冷静に見つめるべきという持論を続けた。
「彼が二刀流にこだわるのは、すべては“レガシー”のためだ。彼はとにかく『史上最高の野球選手』として記憶されたいんだ。もちろん彼が健康である限り、着実にその道を進んでいくと思う。だからこそ、問題は彼を失うわけにはいかないということだ。
もしも、肘に3回目の手術を施すとなったら(復帰は)現実的じゃない。それが怖い。今は球速が上がってきて、ワクワクしているけど、仮に投打で彼を失えば、ドジャースは『最強』とは言えなくなる。そうなるリスクを考えて、彼のことは慎重に使っていくべきだと考えるよ」
百戦錬磨の名投手が「彼のやっていることは本当に大変なことなんだ。それだけ身体ができていて、運動神経が抜群だろうと関係ない」とも強調したように、タイトな日程下での投打二刀流は容易ではない。その中で淡々とリハビリ登板を重ねていく大谷には、ただただ脱帽するしかない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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