名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第12回 セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)は3位DeNAが…
名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第12回
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)は3位DeNAが2位阪神を下し、ファーストステージを突破。日本シリーズ進出をかけてCSファイナルステージでセ・リーグの覇者・広島と戦う。今季の広島はペナントレースを圧倒したように、投打とも充実している。その広島を攻略するにはどのような作戦が有効になるのか? 選手、コーチとして長く球界に携わった伊勢孝夫氏に広島対策を分析してもらった。
(第11回はこちら)

広島打線の不動の2番としてチームに貢献する菊池涼介
チーム打率.273、チーム本塁打152、得点736はセ・リーグ断トツ。盗塁数もリーグ唯一の3ケタとなる112。この数字を見れば、誰だって広島打線が強力なことはわかる。ただ、本当の広島打線の怖さは、こうした数字には表れていない部分にある。結論から言えば、”選球眼”の良さだ。それもボール球を振らないというのは当たり前のことで、広島の選球眼はもうワンランク上のもの。一見、地味に映るかもしれないが、その選球眼の良さが強力打線の支えになっている。
たとえば、2ボール1ストライクと打者有利のカウントになったとき、打者は打ちにいきたるのが普通だ。しかし、そんなときほど不得手な球種に手を出したり、ボール球を打ちにいってしまったりして、凡打に打ち取られることが意外と多い。
その点、広島の打者たちは、いわば”打ちにいくときの選球眼”がものすごくいい。打ち気にはやるカウントでもきっちりボールを見極め、自分が打てる球だけ振りにいく。ストレートを待っていたとしても、外角低めに決まる球は打ちにいっても安打になりにくい。それを広島の選手たちはわかっているのだ。
そうした姿勢が田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の上位から、鈴木誠也、松山竜平らの中軸まで、全員に浸透している。表現を変えれば、広島の打者は「自分の打てる球を知っている」ということだ。
当たり前のことのようだが、実はほかのチームの選手でもこれを自覚している者はほんのひと握りに過ぎない。ましてチームとして徹底しているのは、12球団を見渡しても広島だけと言える。相手にしてみれば、これほど嫌な打線はない。
シーズン中、石井琢朗バッティングコーチにこのことについて聞いたことがあったが、決して徹底させているわけではないと言っていた。それが本当だとすれば、もはやコーチが口を酸っぱくして言う段階ではなく、選手自らの意思でやっているということなのだろう。それでいてあの体全体を使って振り切る力強いスイング。強いはずだ。
事実、丸は「つなぎの打線が身上だが、自分たちは打てる球の選球眼を大事にしている」と語っている。では、そんな広島打線を封じ込める方法はあるのだろうか?
こうした広島打線に対して、かわす投球は通用しない。力でねじ伏せていくしか方法はない。巨人の菅野智之のように、140キロ台中盤から後半のストレートで攻めて、スライダーで打ち取る。そうした正攻法が最も効果的ということだ。
とにかく、広島打線にごまかしは効かない。そのなかでも要注意打者をひとり挙げるとすれば、2番打者の菊池になるだろう。特に1番の田中が出塁すると、菊池は実にうまくライトに打つ。投手にとってプレッシャーのかかるランナー1、3塁の状況をつくられ、クリーンアップを迎えてしまう。
当然、菊池を打ち取るのは簡単なことではない。変化球でも思い切りスイングしてくるように、なんでも食らいついてくる。それでいて、真っすぐの甘い球をピクリともせず、簡単に見送るときがある。私たちはそれを見て、「ああ、エサを撒きよったな」と思うわけだ。
菊池の見逃し方を見て、相手バッテリーは「変化球を狙っているな」と思う。そして真っすぐを続けると、見事に打たれてしまう。菊池を見ていると、追い込まれるまではこうした打席が目につく。つまり、同じ球種を2球続けると打たれる可能性が高いと思った方がいい。
最後に、広島の投手陣についても少し触れておきたい。今年の広島は、先発はともかく、リリーフ陣に不安を残している。広島投手陣への対策を考えたとき、ポイントになるのは3回り目だろう。
広島の先発陣を見ていると、5~6回あたりから疲れが見え、さらに配球傾向も見えてくる。つまり、先発投手に多くの球数を投げさせることができれば、5回以降に勝負をかけられる。逆に、先発投手に中盤まで気持ち良く投げられると、ゲームは一気に広島の流れになる。
こうしてみると、広島との試合は守るも攻めるも”選球眼”が勝負の分かれ目になるということだ。DeNAが”選球眼”との戦いを制することができれば、自ずと勝機も見えてくるに違いない。
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