フィギュアスケートの坂本花織(25歳/シスメックス)が、ミラノ・コルティナ五輪を控える来季(2025−2026)限りで…
フィギュアスケートの坂本花織(25歳/シスメックス)が、ミラノ・コルティナ五輪を控える来季(2025−2026)限りで引退することを明らかにした。昨季から「2季でひとくくり」として五輪シーズンを集大成と位置づけていたが、今回初めて引退を明言した格好だ。最後の大舞台へ向け、「全部出しきりたい」と強い思いをにじませる。
新しく完成した
「シスメックス 神戸アイスキャンパス」のオープニングセレモニーでミニアイスショーを披露した坂本花織
【スパッと決めました】
「もう自分の競技人生は一年を切っている感じなので......」
6月20日、神戸市内で報道陣の取材に応じた坂本花織は、十数分間の質疑応答の後半になってサラッと言った。
3度の世界選手権優勝を誇るトップスケーターの突然の発言に、現場では「ん?」と胸中驚いた記者は多かったかもしれない。競技を退く決断の経緯を問われると、坂本はこう続けた。
「中途半端に2年とか3年やるよりも、いい区切りかなと。次の4年後を目指すとなったら29歳なので不可能かなとも考えて、26歳になる年でいったん区切りをつけようと思って今やっています」
競技引退については、「めっちゃスパッと決めました。今やなって」と、にこやかに言う。昨季に「五輪シーズンへ向けて2季でひとくくり」と発言した頃にはすでにその決断は固まっていたという。
【引退シーズンは絶対この曲】
今オフ中には、樋口新葉と念願だったという旅行へ出かけ、「ふたりでふざけた話から真剣な話までいろんなことをしゃべってリフレッシュできました」という坂本。しかし休息も束の間、5、6月で海外へも渡り、新プログラムの振り付けに取り組んだ。
集大成のシーズンは、ショートプログラム(SP)を『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』、フリーを『愛の讃歌』で挑む。フリーの選曲には自身の特別な思いがあるという。
「ソチ五輪(2014年)で憧れの鈴木明子さんがショートで使われていて、それを見た時に"自分が引退するシーズンは絶対この曲を使いたい"って思った。それを振付師さんにお願いしたら『いいんじゃない?』って久々に採用されました。それと前後2曲合わせて、メドレーのような感じにしています」
一方、SP曲は振付師の提案だという。「グッバイ」のタイトルから、現役最後へのメッセージ性を感じられるが......。
「曲名は『さようなら』という感じなんですが、でも、ここで終わりというよりは、"次の自分に向けて"というような、次へ進むためのショートで、決して終わりではないというのをお伝えしておきたいなと思っています」
囲み取材に応じ、来季限りでの引退を明かした坂本
【めざすは団体・個人とも
「銀」以上】
振り付けも終え、「いよいよここから」と充実した面持ちでシーズンが始まることを実感している坂本。来季に向けてその意気込みとは。
「自分の今までやってきたことを全部出しきりたい。シーズンを通して今までどおり戦闘モードで戦うのも忘れず、どの試合も悔いなく終えたいので今まで以上に完璧を求めてやっていけたら。気づけば五輪まで8カ月、全日本選手権まで半年しかない。本当に時間は短いので精一杯一日一日を過ごして、自分が望んでいる結果になればいいなと思っています」
来年2月のミラノ・コルティナ五輪でめざすは「団体・個人ともに銀メダル以上」。2季前は国際大会全勝を飾った坂本だが、昨季はGPシリーズで2勝(スケートカナダ、NHK杯)したものの、GPファイナルは3位、世界選手権は2位。台頭するアメリカ勢に加え、条件付きで復帰するロシア選手との戦いに注目だ。
神戸唯一の通年型アイススケートリンクは坂本らの練習拠点になる
【セカンドキャリアにも言及】
この日は、坂本の地元である神戸市に新しく完成したアイススケートリンク「シスメックス 神戸アイスキャンパス」のオープニングセレモニーが行なわれた。同市では唯一の通年使用可能なリンクで一般営業のほか、坂本をはじめ、三原真依や三宅咲綺、壷井達也といった選手の練習拠点になる。
ミニアイスショーには坂本(中央右)のほか、三原舞依(右)、壷井達也(中央左)、三宅咲綺(左)も出演
念願だった通年リンクの完成に「テンションが上がりすぎて......」と喜んだ坂本は、「自分にとってこの上なく整った環境なので、これで成績が出なかったらやばい」と笑う。
また、坂本は新リンクの話題に絡めて自身の引退後についても言及している。
「セカンドキャリアでは、インストラクターになることをめざしている。教えていくためにも、自分自身の成績を上げて、少しでもこのリンクとか環境に注目を集めて、神戸から世界へ羽ばたく選手を出していけたらなと思っています。まず、今現役の間にできることをこの1年弱でやれるだけやって、いい流れができるようにしていけたら」
坂本は6月27〜29日に横浜市内で開催されるアイスショー「ドリーム・オン・アイス2025」に出演予定で、新プログラムの披露にも注目が集まる。日本フィギュアスケートの"元気印"らしく、明るく引退表明した坂本のラストシーズンがいよいよ始まる。
関連記事<三原舞依は再起を支えてくれた仲間・ファンへ恩返しを誓う 「スケートができることが、すごく幸せなこと」>