高校野球の春季近畿大会は東洋大姫路(兵庫)の2季連続優勝で幕を閉じた。一方、開催地となった奈良県勢で出場した3校のうち…
高校野球の春季近畿大会は東洋大姫路(兵庫)の2季連続優勝で幕を閉じた。一方、開催地となった奈良県勢で出場した3校のうち、奈良大付が唯一、4強に勝ち進んだ。
奈良大付は準決勝で東洋大姫路に敗れたが、0―1と食い下がった。準々決勝で大阪桐蔭に9―2でコールド勝ちした相手の強力打線を、ソロ本塁打による1点に抑えた。
田中一訓監督は「やっぱり打たないとダメ」と指摘しつつ、「投手陣は新城(楓雅、2年)、上橋(れい、3年)、杉山(竜之輔、3年)と相手打線をよく封じてくれた。持てる力は出せた」と選手たちをねぎらった。
奈良では、長らく「2強体制」が続いている。過去50年、天理と智弁学園以外のチームが夏の奈良大会を制したのは4度しかない。
奈良大付も、夏の甲子園への出場は2018年の第100回記念大会が最初で最後の出場だ。その後、夏は天理に2度、智弁学園にも2度負けた。昨夏は決勝で智弁学園に4―5で敗戦。あと1歩のところで涙をのんだ。
2004年に就任した田中監督は「少年野球や中学生の子どもたちにとって、あこがれの天理、智弁学園なんです。奈良県民にとって、この2強はすごく大きな存在」と話す。
2強はいずれも、甲子園で優勝経験がある。奈良県内の大会では、球場全体で両校を応援する雰囲気を感じるという。
「県民のみなさんも、2強が勝つところを見に来ている気がする。そこを破るのが、本当に厳しい」
奈良大付の評判は、2強に続く〝3番手〟だ。田中監督は「うちには『家から通って野球がしたい』という子らが来てくれる。よく話を聞いてくれるし、良い子たちですよ」。
エースの杉山はかつて天理をめざしていたが、中学3年の体験入部の末に進学をあきらめた。それでも奈良大付で急成長し、最速は145キロに。右腕は「天理と智弁学園を倒して甲子園に行く」と燃えている。
丸刈りだったチーム内の髪形は、2年前の秋から自由になった。現在は丸刈りも短髪も入り交じっている。
監督は「もう髪形にこだわる時代ではない」。そして「この子は髪形が生活面に影響が出ている、この子は自由にしてもきっちりしていると、新しい人間性も見れるからおもしろいんですよ」と明かす。
練習中の口癖は「ユーモアを大切にしろ」「臨機応変にせなあかん」。試合中の不測の事態に対応するためだけでなく、次のステージを見据えた様々な感性を養ってほしいからだ。
「人情とか気持ちとかが好きなんです」。コロナ禍で大会が中止になった際は選手と一緒に涙を流した。「たくさん接して、たくさん成長する姿を見たい。勝つことよりそっちが大切だと思う」
今年こそ、高い壁を打ち破れるか。近畿大会の敗戦で落ち込む選手たちを横目に、田中監督は信頼の言葉を口にした。
「練習も良い雰囲気でできている。強い気持ちで最後に野球ができるように、残りの日々を頑張ってほしい」(室田賢)