反り腰は一見すると姿勢が良く見えますが、実際は骨盤が過度に前傾して腰椎に大きな負担をかけている状態です。そのままの姿勢で…

反り腰は一見すると姿勢が良く見えますが、実際は骨盤が過度に前傾して腰椎に大きな負担をかけている状態です。

そのままの姿勢で生活を続けると、腰が常に緊張した状態となり、コリや痛みが慢性化する恐れも。さらに骨盤の位置がずれることで、思わぬタイミングでぎっくり腰などの急性症状が起こる危険性もあります。

とはいえ、すぐに治すことが難しい「反り腰」。反り腰の基礎知識や姿勢のクセ・悪い習慣を理解して、効果的な改善法を取り入れて、少しずつ改善を目指していきましょう!

反り腰、なぜなる?なりやすい人の特徴

足組み

反り腰になる人には、共通した特徴や原因があります。

・足を組むクセがある人
・長時間のデスクワークで背中を丸めて座っている人
・普段から猫背気味の人
・ハイヒールを頻繁に履く人
・筋力不足の人

姿勢が悪い人は、背骨や腰椎への負担が偏ることで、結果として、反り腰の原因となる骨盤の前傾を招きやすいです。ハイヒールも同様に、重心が前に移動しやすくなり、自然と腰を反らせる姿勢を取りがちになってしまいます。

また、筋力不足も原因のひとつで、体幹が弱いと身体の軸を支えきれずに反り腰が生じやすくなる傾向があります。

気づかぬうちに悪化?反り腰を招く生活習慣と体のクセ

反り腰の原因は、一見すると「些細な日常習慣」や「身体の使い方のクセ」であることが多いです。日常になっているからこそ、気づかないうちに悪化している可能性もあります。原因を見ていきましょう。

悪い姿勢習慣(座り方・立ち方・歩き方)

背中を丸めて足を組む座り方や、片足重心で立つクセがついていると、骨盤が前後に傾きやすくなります。歩き方も、膝が伸びきった状態で歩いていると腰に負担が集中します。これらの悪い姿勢習慣を見直すだけでも、反り腰のリスクを大きく減らすことができます。

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筋力バランスの崩れと運動不足

腹筋やお尻の筋肉が弱いと、腰椎の前弯を抑えるはずの筋肉がうまく働かず、使いすぎている腰まわりの筋肉ばかりが緊張しがちになります。さらに普段から全身を動かす機会が少ないと、体幹の筋力が低下して、骨盤を正しい位置に保つことが難しくなってしまいます。

ヒールの高い靴を長時間履く影響

ハイヒールを長時間履くと重心が前方へ移動するため、腰を反ってバランスを保とうとする姿勢が習慣化しやすくなります。また、足首やふくらはぎの筋肉も緊張しやすくなり、下半身全体の負担が増すことで骨盤や腰椎のバランスが崩れてしまいます。

出産・体重増加による骨盤の前傾

妊娠や急激な体重増加などでお腹が大きくなると、重心が前方に偏りやすいため、骨盤を前に倒して支えようとするクセがつきがちです。産後は筋力が低下していることも多く、そのまま反り腰が固定化しやすいため、計画的な骨盤ケアや体幹トレーニングが必要です。

反り腰によって起こる不調やデメリット

腰が反った状態を放置すると、見た目の問題だけでなく、体のさまざまな部分に不調が出やすくなります。反り腰による不調やデメリットについて、確認していきましょう。

ぽっこりお腹や出っ尻になる

骨盤が前傾すると、お腹が前方へ押し出され、下腹部がぽっこりと見えやすくなります。さらに、お尻も後ろに突出した印象になり、全体的にスタイルが崩れて見えがちです。見た目が気になるだけでなく、尿もれや骨盤底筋のトラブルなども引き起こしやすくなるので注意が必要です。

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肩こり・首こり・腰痛の慢性化

反り腰になると背骨のラインが崩れ、頭部や肩甲骨周辺の筋肉が過度に緊張するため、肩や首のこりが慢性化しやすくなります。さらに、腰椎の反りが強いと腰を痛めるリスクも高まり、腰痛が長期化・慢性化する原因にもなります。

むくみや冷えなど全身の不調

骨盤の歪みは血流を阻害して、リンパの流れにも影響を及ぼしやすいといわれています。特に下半身への負担が増すと、足先の冷えやむくみが強くなることもあるでしょう。これらの不調が続くと日常生活のクオリティが下がり、疲れやすさや倦怠感にもつながりやすくなります。

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反り腰の基礎知識:正しいS字カーブの重要性

私たちの背骨は、横から見ると「ゆるやかなS字カーブ」を描いているのが正常です。このカーブは、歩いたり走ったりしたときの衝撃を吸収して、身体の重さを分散させるサスペンションのような働きをしています。

反り腰

ところが、反り腰の人はこのS字カーブの腰の部分(腰椎)が過剰に反ってしまっている状態です。この状態になると、本来であれば全身で受け止めるべき負担が腰に集中し、腰痛や姿勢の崩れを引き起こしやすくなります。

反り腰改善のカギは「骨盤の傾き」

骨盤前傾

反り腰の人は、骨盤が通常より前に傾いている「骨盤前傾」の状態になっていることが多く、それに引っ張られるようにして腰椎のカーブがきつくなります。

すると、体の重心が後ろにズレて、バランスを取るために首を前に出したり、立っているときは膝を曲げたりといった補正動作が無意識のうちに起こります。このような全身の連鎖が、腰だけでなく肩こりや猫背、下半身太りといった不調にもつながっていくのです。

正しい姿勢を保つには、背骨のS字カーブを整えることが欠かせません。そして、その鍵を握るのが骨盤です。

骨盤が立ち、バランスの取れた位置に収まっていれば、背骨も自然と理想的なカーブを描くようになります。まずはこの骨盤の傾きを整えることが、反り腰改善の最初の一歩となるのです。

骨盤のゆがみを改善する簡単ストレッチ。「足踏み」でセルフチェックしてみよう

椅子に座ってできる!反り腰セルフチェック方法

「自分が反り腰かどうかわからない…」という方は、椅子に座った状態で簡単にできるセルフチェックを試してみましょう。

反り腰チェック

まずは深く考えず、普段通りの姿勢で椅子に座ってみましょう。足の裏は床につけて、背もたれに寄りかからず、骨盤で座っている意識をしてください。

そして、腰の後ろに手を差し込んでみましょう。背もたれと腰の間(くびれのあたり)に手のひらがスッと入り、余裕がある場合は、「反り腰の可能性大」です。反り腰の方は、骨盤が前に傾いて腰が浮いているため、手のひらがスルッと入ってしまいます。

手がピッタリ入るくらいが、理想的な骨盤の角度です。手が入らない、または、背中が丸まっている場合は、猫背・骨盤後傾の可能性があります。

次:反り腰には、ストレッチ → 筋トレの順番が効果的!

反り腰改善にはストレッチ → 筋トレの順番が効果的

反り腰が気になる方は、まずは過度に緊張している筋肉をほぐしてから、弱っている筋肉を鍛えることがポイントです。エクササイズの順番やおすすめのトレーニング種目を紹介します。

ストレッチで筋肉をゆるめてから筋力トレーニングを行う、この流れが基本的なアプローチとなります。筋肉は緊張していると可動域が狭まり、効率的にトレーニングしにくくなるためです。

また、ストレッチで柔軟性を高めることで、正しいフォームで筋トレができるようになり、ケガのリスクも減らすことができます。適切に負荷をかけながら筋トレを進めることで、骨盤や腰椎を支える筋肉をバランスよく強化して、反り腰を根本から改善していきましょう。

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ストレッチ編(筋肉の緊張をゆるめる)

反り腰の主な原因となるのが、股関節まわりや太もも前側の筋肉の硬さです。これらの筋肉を重点的にストレッチして、骨盤を正しい位置へ戻すための準備を整えていきましょう。

反り腰の人におすすめのストレッチ橋のポーズ(セツバンダーサナ)

反り腰におすすめ

仰向けで膝を立て、腹式呼吸をしながら骨盤を動かすこのポーズは、反り腰の原因となる骨盤前傾の癖を整える効果があります。お尻と太もも裏を使って支える意識を持つことで、腰への負担を減らしつつ、体幹と骨盤周りの安定感を高めます。

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卵のポーズ(ガス抜きのポーズ/パヴァナムクターサナ)

反り腰におすすめ

膝を胸に引き寄せることで腹筋下部が働きやすくなり、反り腰の人にとって弱くなりがちな腹筋のスイッチを入れるのに効果的です。また、腰を床につけることで、過度な腰椎の反りを自然とリセットしやすくなり、リラックス効果も高いポーズです。

セロトニンの分泌を促す運動「ガス抜きのポーズ」│LAVAの睡眠ヨガ

キャットアンドカウ(マールジャーラ・ビティラーサナ)

反り腰におすすめ

背骨と骨盤の連動を意識しやすい動きで、特に「吐くときに背中を丸める」キャットの動きが、骨盤を後傾に導く練習になります。骨盤の位置を意識しながら動かすことで、腰椎の可動域を広げ、反り腰による腰の過緊張を和らげる効果があります。

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筋トレ編(弱くなった筋肉を鍛える)

柔らかくなった筋肉を正しい動きで使えるように、腹筋やお尻、太もも裏などを中心に鍛えていきましょう。体幹を安定させることで、日常の動作でも骨盤を正しい位置に保ちやすくなります。

ドローイン(インナーマッスル強化)

筋トレ「ドローイング」とは。効果的なやり方、お腹を凹ませるコツ

仰向けになりお腹に手を当てて、息を吐きながらへそを背中側に引き寄せるイメージで腹筋を締めます。その状態を数秒キープしたらゆっくり緩める動作を繰り返しましょう。インナーマッスルを鍛えることで、骨盤周りの安定感が増し、反り腰を予防・改善しやすくなります。

ステップアップ(大殿筋・ハムストリングスの強化)

ステップアップ筋トレ

椅子や階段など、高さ20~30cmの安定した台を使って行う「片脚立ちトレーニング」。片脚でしっかりと体を持ち上げることで、ヒップラインに関わる大殿筋やもも裏の筋肉を効率よく鍛えることができ、骨盤を支える力もアップします。体を前に倒さず、膝がつま先より前に出ないように意識すれば、体幹も自然と使われるため、反り腰改善に効果的です。

1.台に片足を乗せて、体をまっすぐ上げる
2.台に乗せた脚の力で引き上げる(反対脚は添えるだけ)。初心者は1~2秒キープから。
3.片脚10〜12回、交互に行う

デッドバグ(反り腰にやさしい体幹トレーニング)

【初心者おすすめ】腰にやさしい体幹トレーニング。「デッドバグ」の正しいやり方(寝たままOK)

仰向けで両手両脚を天井に向けて伸ばし、対角線上の手足を同時に下げる運動です。腰が反らないよう床に押し付けながら行うことで、腹筋群と背筋群をバランスよく鍛えられます。初心者は膝を曲げた状態で小さな動きから取り入れると安全です。

次:反り腰で筋トレはダメなの?その答えは…

反り腰で筋トレはダメなの?その答えは…

反り腰でも筋トレは「ダメ」ではない。むしろ必要!

反り腰で筋トレはダメと言われている理由は、筋トレにより悪化するためです。しかし、反り腰の人が筋トレで悪化する原因は、次のような「フォームミス」や「部位の偏り」によるものです。

腰を反ったままで腹筋運動 → 腰椎に負担

お尻を使わずに太ももばかり使ってしまうスクワット

体幹が弱いまま無理にプランク → 腰が落ちて余計に反る

「正しい筋肉が使えていない」「骨盤を支えられていない」状態で筋トレをすると、反り腰を助長してしまうことがあるため、正しい知識でトレーニングを行いましょう。また、反り腰の人に向かないトレーニングもあるので、避けましょう。

反り腰の人に注意が必要なトレーニング

次のようなトレーニングは、かえって反り腰を助長してしまう恐れがあります。腰を大きく反らす動きが多いエクササイズや、フォームが崩れやすい高負荷のトレーニングの種類を知っておきましょう。

1. ハイプランク(板のポーズ)

反り腰は注意が必要

体幹が弱い状態で行うと、腹圧が抜けて腰が反りやすくなり、腰椎への負担が大きくなるポーズです。本来は体幹強化に効果的ですが、反り腰の人は腹筋が使えていないと逆効果になる可能性があるため、代わりに膝付きプランクから始めるのが安全です。

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2. 背筋系ポーズ(コブラ・アップドッグ・バッタ)

反り腰は注意が必要

これらの反らせ系ポーズは、本来は背中を鍛える良い動きですが、反り腰の人は腹筋が抜けやすく、腰で頑張ってしまう傾向があるため注意が必要です。正しく行わないと、腰椎を過伸展させてしまい、腰痛や張りにつながるリスクがあります。腹筋の安定感が整ってから取り入れるのがベターです。

三日月のポーズ(アンジャネーヤーサナ)

反り腰は注意が必要

三日月のポーズは骨盤を前にスライドさせる動きが入るため、骨盤前傾と反り腰を助長しやすいです。特にお腹を引き込む意識が抜けると、腰をグッと反ってしまい、腰椎への圧迫が起きやすくなります。反り腰傾向のある人は、骨盤を立てて上半身を起こしすぎないよう調整しましょう。

他にも、重量のあるバーベルを担いだスクワットで背中を反りすぎたり、柔軟性不足の状態でブリッジのような逆アーチ姿勢を無理に行ったりすることは危険です。初心者や腰痛がある方は、負荷をそこまで高くしない種目から始めて、フォームを安定させることを優先して選んでいくとよいでしょう。

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反り腰の人が日常生活で意識したいポイント

日頃のちょっとした姿勢や習慣が、反り腰を長引かせたり、再発させたりする原因となります。椅子に座るときや立ち上がるとき、歩くときなど、普段から腰や骨盤の位置を意識して、正しいアライメントをキープするよう心がけましょう。

正しい座り方・立ち方を習慣づける

座る際は、骨盤を立てて両足を床につけて、腰に過度な負担がかからないようにしましょう。立つときも、両足に均等に体重を乗せて、膝をロックしないで軽くゆるめると腰への負荷が和らぎます。

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ヒールを控えて、足に合った靴を選ぶ

普段からハイヒールを履く習慣がある方は、ヒールの高い靴を避けることで反り腰の悪化を防ぐことができます。フラットシューズでも自分の足に合うかどうかをよく確認して、インソールなどでサポートを強化すると、骨盤周りの負担を減らせます。

こまめなストレッチと体幹トレーニング

長時間同じ姿勢を取らずに、1時間に1回を目安に立ち上がって軽く体を動かすようにしましょう。こまめにストレッチで筋肉をほぐして、定期的に体幹トレーニングを取り入れることで、反り腰を予防・改善する効果を維持しやすくなります。

監修者プロフィール

三木 彩

ヨガ講師・管理栄養士/ママニティオンラインヨガスタジオ認定講師。
保育園や企業での栄養管理や献立作成の経験を経て、ママの心と体のケアに深く関わりたいと、ヨガインストラクターの資格を取得しフリーに転身。現在は、「ママの笑顔は家族の幸せ」をコンセプトに、オンラインでママ向けのヨガレッスンを行うほか、ママの仕事と子育ての両立を応援する活動にも取り組んでいる。

<Edit:編集部>