■2回戦に勝てば、明大との優勝決定戦へ駒を進める 3季連続優勝を狙う早大は5月31日、東京六大学野球春季リーグの慶大1回…

■2回戦に勝てば、明大との優勝決定戦へ駒を進める

 3季連続優勝を狙う早大は5月31日、東京六大学野球春季リーグの慶大1回戦に11-2で先勝した。エースの伊藤樹(たつき)投手(4年)が8回2失点に抑え、通算19勝目を挙げた。早大は6月1日の2回戦に勝ち、2勝0敗で今季勝ち点を「4」とすれば、明大との優勝決定戦に駒を進めることができる。敗れて1勝1敗となれば、その時点で明大の4季ぶりの優勝が決まる。

 試合開始は雨のため、予定より1時間遅れの午後2時となった。しかしプレーボール直後、雨はさらに強まった。マウンドはぬかるみ、ボールは滑る。慶大のエース・外丸東眞投手(4年)は実力を発揮できないまま、初回に3点、3回にも2点を失い、早々とマウンドを降りた。

 それでも早大のエースは崩れなかった。伊藤も初回2死から、相手の3番打者のボテボテの当たりが投前内野安打となるアンラッキーがあったが、4番の中塚遥翔外野手(2年)に対し、チェンジアップを2球見せてカウント0-2と追い込んだ後、ストレートを外角低めいっぱいに突き刺し、見逃しの3球三振を奪った。

 チームが5点のリードを取った後、4回先頭の中塚に右翼席へ1発を浴び、7回2死一塁では、詰まらせた当たりが右前に落ちてタイムリー二塁打となったが、8回7安打2死球で2失点。「雨の中でどこまで行けるかと思いながら投げましたが、8回まで行けてよかった。マウンドがぬかるむ中で丁寧に放れたのは、かなり成長かなと思います。四球、四球で崩れなかったのがよかったです」と満足げに振り返った。

 雨中でも乱れない秘訣については「ぬかるんだり、ボールが滑ったりすると、自分自身と戦ってしまいがちですが、ちゃんとバッターに対し集中して投げられていれば、なんとかなると信じています。そういうメンタルが大事かなと思います」と説明した。

早慶1回戦で8回2失点に抑え、通算19勝目を挙げた早大・伊藤樹【写真:加治屋友輝】

■小宮山監督の通算20勝にもあと1「準備します」

 伊藤は今季、5月16日に38度の高熱を発するアクシデントに見舞われたが、3日後の19日・明大2回戦でノーヒットノーランを達成。翌20日の同3回戦でも、投げては9回のピンチにリリーフ登板して無失点投球、打っては延長10回タイムリー安打で、勝ち点奪取の原動力となった。“逆境”での強さは折り紙付きなのである。

 今季6勝0敗で、通算19勝3敗、防御率1.89。恩師の小宮山悟監督が在学中にマークした通算20勝(10敗、防御率1.85)へ、あと1勝と迫った。伊藤自身は「外丸と(通算18勝で)並んでいたので、そういう意味でも絶対に勝ちたかった」と本音を明かした。

 さらに小宮山監督は「明日(6月1日)勝たないと、優勝決定戦はない。伊藤本人も投げるつもりでしょうし、できれば温存したいのが本音ではありますが、明日全員の力で勝利をもぎ取りにいきます」と予告した。伊藤自身も「リリーフ陣の状態がいいので、必要ないかなと思います」とチームメートを気遣いつつ、「必要とされれば、しっかり抑えられるように準備します」と話した。

 早大は昨秋も、明大との優勝決定戦にもつれ込んだ末、伊藤が9回3安打完封して天皇杯を引き寄せている。今季も同じ展開となれば、ノーヒットノーランの衝撃も加わり、明大にとっては伊藤の存在が重いプレッシャーとなる。「優勝決定戦のマウンドに、樹を上げられるように頑張ります」。小宮山監督はエースを頼もしげに見やり、会見を締めくくった。