■チームの優勝可能性は前日の1回戦に敗れた時点で消滅していた…「絶対に目の前で相手の優勝を見たくなかった。意地を見せられ…

■チームの優勝可能性は前日の1回戦に敗れた時点で消滅していた…

「絶対に目の前で相手の優勝を見たくなかった。意地を見せられたと思います」。法大のエースナンバー「18」を背負う左腕・野崎慎裕投手(4年)は試合終了後、興奮冷めやらぬ表情で吐露した。

 法大は25日、東京六大学野球春季リーグの明大2回戦に8-3で勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。明大が勝てば4季ぶりの優勝が決まる大一番だったが、そうはさせじと阻止。法大の優勝の可能性は前日(24日)の1回戦に敗れた時点で完全消滅しており、この日はまさに「意地を見せる」ことだけが目的の試合だった。

 初回から打線が機能し、5番の片山悠真外野手(3年)が左前へ先制2点適時打。一方、先発投手の野崎はその裏、2死一、三塁のピンチを背負い、リーグトップの打率.447(成績は25日現在、以下同)を誇る宮田知弥内野手(4年)を左打席に迎えた。この試合の流れを決める分水嶺である。

 フルカウントからの7、8、9球目は全て内角球。ツーシーム、カットボールでファウルを2球打たせ、最後は高めの143キロのストレートで宮田のバットに空を切らせた。野崎は歓喜の雄叫びを上げながら、何度もガッツポーズを繰り返し、「内角を攻めきれてよかったです」と余韻に浸った。

 2回にも2死満塁とされ、相手の2番打者・福原聖矢捕手(3年)に痛烈なレフトライナーを浴びたが無失点でしのぐ。3回にもプロ注目の強打者・小島大河捕手(4年)に右越えソロを浴びた後、なおも2死一、二塁と追い詰められたが、追加点を許さなかった。「試合前からピンチを何回も背負う想定をしていたので、慌てることなく投げられました」と明かした。

 昨年までは、篠木健太郎投手(DeNA)、吉鶴翔瑛投手(東芝)の2枚看板の陰に隠れていた。しかし、篠木から背番号「18」を継承した今季は、逃げも隠れもできない立場。「18番を背負わせてもらっているので、チームを引っ張っていけるように、大事な試合で勝てるようにと思っています」と自覚は十分だ。

5回1失点の粘投をし今季3勝目を挙げた法大•野崎慎裕【写真:加治屋友輝】

■「ウチは4番の松下にどうチャンスで回すかのチームです」

 5回までに6安打3四球を許し、98球を要しながら1失点でしのぐと、6回からは2番手の小森勇凛投手(2年)にバトンタッチ。野崎の“粘投”に応えるように、打線も得点を重ね、この時点で6-1とリードし、試合の流れをつかんでいた。“元プロ”の大島公一監督は「本当はもっと投げさせたかったのですが、ちょっとアクシデントがありまして……それにしても、よく5回まで粘ってくれました」とエースを称えた。

 意地を見せたかったのは、野崎だけではなかった。大島監督は、デビューしたてながら2番に定着し猛打を振るってきた境亮陽外野手(1年)を、この日初めて1番に置いた。境は2回に右前適時打を放つなど、5打数3安打2打点1四球の活躍で応え、「高校(大阪桐蔭高)時代も1番が多かったので、気負うことなく自然に、打席に入れました」と笑顔を浮かべた。

 打順変更がズバリ的中した大島監督は「ウチは(主将で4番の)松下(歩叶内野手)にどうチャンスで回すかのチームです。その中で、どの並びが一番いいのかを考えました」と説明しつつ、「(打順は)朝まで迷いました」とさりげなく苦しかった胸の内をほのめかした。

 法大は2020年の春季優勝を最後に、10季連続の“V逸”が決まっている。それでも通算優勝回数では、早大の48回に次ぐ2位の46回で、明大の43回をわずかながら上回っている。先輩たちが築いてきた伝統に懸けて簡単には、明大に天皇杯を抱かせるわけにいかなかった。

 法大の粘りで俄然混とんとする今季優勝の行方は、最終週の早慶戦まで持ち越されることになった。