■福岡大大濠高3年春にエースとして選抜高校野球8強 プロも注目する左腕、明大・毛利海大投手(4年)は24日、法大1回戦に…

■福岡大大濠高3年春にエースとして選抜高校野球8強

 プロも注目する左腕、明大・毛利海大投手(4年)は24日、法大1回戦に先発して9回3安打1四球無失点に抑え、自身のリーグ戦初完投を完封で飾った。チームは25日の同2回戦に勝ちストレートで勝ち点を「4」とすれば、4季ぶり44回目の優勝が決まる。

 最後の最後に試練が待っていた。6-0とリードして9回を迎えたが、完封を目前にして2安打を浴び1死一、二塁のピンチ。しかし毛利は法大の3番・片山悠真外野手(3年)に、この日の111球目を打たせ、三ゴロ併殺に仕留める。思わず左拳を突き上げ、笑顔が弾けた。

 明大は2022年の春から3連覇を達成したが、その後3季連続で2位にとどまっている。今季は5年間助監督を務めてきた戸塚俊美監督が現職に昇格し、V奪回を期している。順調に白星を重ねていたが、前週に昨年春秋連覇の早大に1勝2敗で勝ち点を奪われ、暗雲が垂れ込みつつあったが、エースが流れを引き戻した格好だ。

「真っすぐは最後まで140キロ台後半の球速が出ていたので、変化球を低めに集めればゴロを打たせられると思っていました」とうなずいた毛利。「高校時代以来の完投だったので、気持ちがよかったです。練習試合でも7回くらいまでで、本当に大学に入ってから初めて9イニングを投げました」と心地よい疲労感に身をゆだねた。

 福岡大大濠高3年の春には、エースとして選抜高校野球大会8強入り。同年7月23日、夏の福岡大会準々決勝・筑陽学園高戦で完投しながら、0-3の零封負けを喫し、春夏連続の甲子園はならなかった。この時以来の完投だったわけだ。

 昨年まで15年連続でドラフト指名選手を輩出しているほど、人材豊富な明大では、簡単には登板機会を得られなかった。しかし昨春から先発を任されるようになり、昨秋はリーグ2位の防御率1.53をマークした。今季はさらに安定感を増し、今のところ防御率1.32はリーグ断トツ。最優秀防御率のタイトルへ着実に近づいており、チームにとってはいまや押しも押されもせぬエースだ。

法大1回戦でリーグ戦初完投初完封となる9回無失点5奪三振の力投をした明大•毛利海大【写真:加治屋友輝】

■色めき立つプロ「スライダーとチェンジアップの出所が同じ」

 最速150キロの速球を軸に、スライダー、チェンジアップ、カーブも駆使して、相手に付け入る隙を与えない。「去年までは三振を取ろうと思って力が入り、フォームがバラバラになっていました。いけるところまで全力でいくことしかできませんでしたが、今季は長いイニングを投げるにはどうしたらいいかを考えられるようになりました」と成長を実感している。

 それでも「エースナンバー(11)は高須(大雅投手=4年)なので(毛利は「1」)、陰に隠れながらやっています」と付け加え、謙虚にほほ笑んだ。

 毛利の成長に、プロも色めき立っている。広島、ドジャース、ヤンキースで日米通算203勝を挙げた黒田博樹氏や“鉄人”金本知憲氏らを発掘したことで知られる名スカウト、広島・苑田聡彦顧問は「昨年に比べて急成長しているので、びっくりしています」と明かし、「左腕で147〜148キロ出れば、プロでも十分通用します。それに、同じ球の出所からスライダーとチェンジアップが来るので、相手打者は反応しづらいと思います」と高く評価する。

 就任1季目での優勝が近づいた戸塚監督は、「完投、完封できる投手として実績をつくれれば、と思いながら見ていました。最後をよく踏ん張ったと思います」。教え子の“就職活動”にも少し思いを馳せた。