NPB通算2038安打の新井宏昌氏が解説…逆方向への本塁打増【MLB】Dバックス 9ー5 ドジャース(日本時間20日・ロサンゼルス) ドジャースの大谷翔平投手は19日(日本時間20日)、本拠地で行われたダイヤモンドバックス戦で、“逆方向”の…

NPB通算2038安打の新井宏昌氏が解説…逆方向への本塁打増

【MLB】Dバックス 9ー5 ドジャース(日本時間20日・ロサンゼルス)

 ドジャースの大谷翔平投手は19日(日本時間20日)、本拠地で行われたダイヤモンドバックス戦で、“逆方向”の左翼席へメジャー単独トップとなる17号ソロを放った。同日現在、打率はナ・リーグ6位の.312、打点も同14位の31に上昇中。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が現状を分析した。

 この日はダイヤモンドバックス先発の右腕ブランドン・ファット投手と対戦。1-7とリードされて迎えた6回の第3打席ではカウント1-1から、外角のストライクゾーンに入って来た135キロのスライダーを、逆らわずに左翼席へ放り込んで見せた。

 最近の大谷の本塁打は、15日(同16日)のアスレチックス戦で左中間、中堅へ2発。翌16日(同17日)のエンゼルス戦では中堅へ1発と、センターから左方向が続いている。新井氏は「4月中はやけに強振し、結果的に引っ張った方向へ打球が飛ぶシーンが目立ちましたが、最近はスイングが改善され、逆方向への大きな打球が増えてきました」と評価。その上で「もったいない打席もありました」とも指摘する。

 初回の第1打席は、打者有利なカウント2-1から、外角の甘めのスライダーを見送り、結果的にフルカウントから外角低めのチェンジアップを打って二ゴロに倒れた。新井氏はこの打席を「2ストライク後に難しい球が来ました。仕方がなかったとは思いますが、4球目のスライダーを打っていった方が、チャンスが大きかったと思います」と見た。

 4回の第2打席は、カウント0-1から外角低めのチェンジアップを打つも中直。球をとらえたのはバットの先端寄りだった。「決して悪くはない当たりでしたが、カウント的に追い込まれてもいないのに、自分の体から遠ざかっていくチェンジアップに手を出したことに疑問が残ります。狙っていた球とは思えない」と新井氏は首をかしげた。

「追い込まれるまでは速い球や体に近づいてくる球に照準を合わせる」

「私自身も現役時代は左打者で、右投手に対し追い込まれるまでは、速い球やスライダー、カットボール、カーブのように体に近づいてくる球に照準を合わせていました。逆にシュート、シンカー、チェンジアップのように遠ざかっていく球には、手を出さないように心がけていました。指導者になってからも、左打者にはそうアドバイスしています」と持論を展開。「早いカウントでチェンジアップに手を出した第2打席は“打たされた”と言うべきだろうと思います」と振り返った。

 かつてヤクルトに4年間在籍したスコット・マクガフ投手と対戦した8回の第4打席もしかり。内角低めのボール球のスライダーを2球見送った後、真ん中外寄りに来た150キロのストレートを見送りカウント2-1。2-2となった後、5球目の真ん中高めの151キロのストレートに差し込まれ、二ゴロに終わった。

「3球目の甘めのストレートを、打つ気も見せずに見逃したのは惜しまれます。ひょっとするとスライダーを狙っていたのかもしれませんが、変化球が2球続けば、次は速い球に照準を合わせるのが普通です。仮に3球目を振りにいけていれば、たとえ空振りやファウルだったとしても、結果は変わっていたかもしれません」と語る。

 総じて「この日の大谷は、見事な本塁打も打ちましたが、打つべき球と手を出さないでおく球を、徹底し切れていなかった気がします。相手が投げる球種に関するデータは頭に入っていたはずですが、どんな攻め方をしてくるのか、探り探りだった印象です」というのが新井氏の見立てだ。

 大谷ならではの非常にレベルの高い話ではあるが、向上の余地はまだあることを示しているとも言える。新井氏は「このまま調子を上げていけば、今季も打撃3部門全てでタイトル争いに加わることになると思います」と今後の活躍に期待を寄せていた。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)