サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニ…

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム。今回は、白い紙に「世界」を創造する素晴らしい仕事。

■『アオアシ』を見て「勉強」

「『アオアシ』を見て戦術を勉強しました」

 私が監督をしている女子チームで、20代の選手がそう話しているのを聞いてたまげた。サッカーのお手本の映像を見ようと思ったらYouTubeで無限にあるのに、漫画やアニメで学ぶなんて…。

 サッカー漫画と言えば、「ボールは友達」のサッカーの申し子が主人公の『キャプテン翼』である。

「週刊少年ジャンプ」で1981年から1988年まで連載され、後にテレビアニメにもなって日本中のサッカー少年たちに影響を与えた。

 1977年に始まった「全日本少年サッカー大会(現在のJFA全日本U-12サッカー選手権大会)」は、日本サッカーの裾野を大きく広げたが、日本サッカーのひとつの「どん底」の時代、『キャプテン翼』がなければ、小学生たちの間にあれほどのサッカー熱は生まれなかっただろう。

 後にアニメ化されてテレビ東京などで放映されて、これも人気を博し、アニメは50か国以上に輸出されて世界中のサッカー少年たちをトリコにした。Jリーグ選手はもちろん、アンドレアス・イニエスタやキリアン・エムバペといった世界的なスター選手もこのアニメのプレーに憧れて練習に励んだという。

 コミックス自体も全世界で9000万部以上売れていると言われ、作者の高橋陽一(1960~)は2023年に日本サッカー殿堂入りを果たしている。

■高校選手権を「人気大会」に!

『キャプテン翼』に先立つ人気サッカー漫画は『赤き血のイレブン』だろう。1970年正月の全国高校サッカー選手権で浦和南高校(埼玉県)が優勝。エースの永井良和(2年生)は一躍スターとなった。そして優勝とほぼ同時に「週刊少年キング」でこのサッカー漫画の連載が始まった。原作・梶原一騎(1936~1987)作画・園田光慶(1940~1997)のコンビである。

 そしてその年の4月には、早くもテレビアニメにもなった。地球の丸みを感じるデコボコの土のグラウンドをザクザクと走るシーン(ドリブルの想定だった)ばかり記憶に残っているが、視聴率は悪くなかった。

 当時関西で行われていた高校選手権を首都圏に持ってきて野球の甲子園に匹敵する大会にしようとしていた日本テレビが、前年夏の高校総体で優勝した浦和南を見て、日テレ系でのアニメ化を約束して「少年キング」に働きかけたものと思われる。

 梶原一騎は、「巨人の星」、「柔道一直線」、「あしたのジョー」などの超ヒット作を週刊の少年漫画誌に連載していた当代随一の漫画原作者であった。この作品で「高校サッカー」をアピールした日テレは、1976年度の大会(1977年正月)から会場を首都圏に移し、一躍、人気大会とした。

■作者ちばてつやの「広い視野」

 だが私が知る限りでは、マスメディアにおけるサッカーをテーマにした漫画の最初は、『ハリスの旋風(かぜ)』ではなかったか。作者はちばてつや(1939~)。「ハリス学園」という学校に入学した石田国松という少年が、抜群の運動神経を生かして野球部、剣道部、ボクシング部、そしてサッカー部で次々と活躍するという話で、1966年から1967年にかけて「週刊少年マガジン」に連載された。テレビアニメでも人気となったが、主人公・石田国松の声を演じたのは、後に「ドラえもん」となる大山のぶ代であった。

 サッカー部では、慣れない足でのプレーに苦労するが、最終的には全国優勝を果たす。そして、それを最後にアメリカ留学するという設定で連載は終了する。サッカー部のキャプテンが「サハーラ東郷」という日本と海外にルーツを持つ少年だったところに、「サッカーの国際性」を感じ取った作者・ちばてつやの視野の広さを感じさせる。

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