10月7、8日、リードW杯第6戦が中国・呉江で行われた。女子はスロベニアのヤンヤ・ガンブレットが第5戦に続いて5勝目を挙げ、男子はイタリアのステファノ・ジソルフィが今シーズン初優勝。日本勢は女子で野口啓代が4位に入賞し、男子では楢崎智亜が…


 10月7、8日、リードW杯第6戦が中国・呉江で行われた。女子はスロベニアのヤンヤ・ガンブレットが第5戦に続いて5勝目を挙げ、男子はイタリアのステファノ・ジソルフィが今シーズン初優勝。日本勢は女子で野口啓代が4位に入賞し、男子では楢崎智亜が自身初のリードW杯表彰台となる銀メダルを獲得した。

 女子では野口と小武芽生が今季リードW杯初参戦。野口は予選両ルートを完登し、今年の日本選手権女王の実力を示す。同率1位にヤンヤ、アナ・バーホーベン(ベルギー)、キム・ジャイン(韓国)と今季のリードシーンを牽引する3人が並び、そこに新鋭の白石阿島(米国)も名を連ねた。そのほか、大田理裟をはじめ日本から出場の5名全員も予選を突破。準決勝では16番手まで30地点を超える選手が現れなかったが、17番手のジェシカ・ピルツ(オーストリア)が37地点まで登ると、その後上位陣が次々と高度を更新。22番手の白石、23番手の野口も40+に到達して決勝進出を確実にすると、最後に登るヤンヤは完登でファイナルへ進出した。

 決勝は先頭のジュリア・シャノーディ(フランス)が36+まで達すると、この記録が一つのボーダーラインに。後続の白石、野口らが手前の33地点を攻略できず、上位3人がどう登るのかに注目が集まった。すると6番手のキムはこの難局を危なげなく通過し、時間ギリギリでTOPに手をかける45+まで到達。続くバーホーベンは28+でまさかの落下となったが、TOPを掴まなければ優勝はないという状況でスタートしたヤンヤは難所を悠々と攻略。レストを挟みながらさらに高度を上げていくと最後はTOPをしっかりと掴み、クイックドローにロープをかけて歓声が上がる会場へ喜びを爆発させた。ヤンヤは唯一予選から全てのルートを完登する完璧なクライミングで今季5勝目となった。

 男子では今季リードW杯に初参戦の楢崎、渡部桂太らボルダリング代表組を含む7名がエントリー。また、今季ボルダリング年間王者に輝いた韓国のチョン・ジョンウォンも2014年木浦大会以来の参戦となった。予選は野村真一郎がルート1を37+、ルート2を完登という好スコアで5位につけると、楢崎も6位と続き日本勢は6人が予選を突破する。準決勝は多くの選手が序盤の強傾斜に入るルートに苦しみ脱落していくなか、楢崎、是永敬一郎、緒方良行の3人が上位に食らいついて決勝進出をものにした。

 迎えた決勝の先頭を登る緒方は24+と振るわず、是永も27+で落下。続くチョンが是永をわずかに上回る30+まで到達して首位に立つと、4番手の楢崎が登場。楢崎はテンポよく高度を伸ばしていき、終盤で足の引っかけに失敗しバランスを崩して力尽きるも高度34+を刻んで首位に躍り出る。その後年間1位を独走するロメイン・デグランジュ(フランス)がまさかの30+でフォールとなると、後続は31までしか届かず、楢崎は最後のジソルフィを残して首位をキープする。そのジソルフィはあまりレストを入れずに一気に登ると、楢崎がフォールした場面をしっかりと手で抑え、その記録を超える。そこでじっくりレストを挟むと、慎重にTOPホールドまでたどり着き、見事に今季初優勝。4年ぶりの出場となったボルダラーに簡単に金メダルを渡すまいとしたジソルフィがリードクライマーの面目を保った。

 最後に追い抜かれてしまった楢崎だったが、2013年以来のリードW杯で初のメダルを獲得。複合で争われる東京2020へ向け、確かな手ごたえを掴んだはず。女子も今季は決勝進出が大きな壁となっていたが、野口が4位入賞と結果を残した。なお、同時開催となったスピードW杯第6戦に日本男子の楢崎、緒方、藤井快の3名が出場。楢崎が公式戦自己ベストを更新する7秒85を記録したが、いずれも予選敗退となった。次回リードW杯第7戦は10月14、15日に中国・廈門で行われる。


<リード女子・決勝>

1位:ヤンヤ・ガンブレット(18/スロベニア)/TOP
2位:キム・ジャイン(28/韓国)/45+
3位:ジュリア・シャノーディ(21/フランス)/36+
4位:野口 啓代(28)/33.5+ ※準決勝4位
5位:モーリー・トンプソン・スミス(19/イギリス)/33.5+ ※準決勝6位
6位:白石 阿島(16/米国)/33+
7位:ジェシカ・ピルツ(20/オーストリア)/31+
8位:アナ・バーホーベン(21/ベルギー)/28+
―――――
14位:大田 理裟(24)※準決勝進出
16位:義村 萌 (20)※準決勝進出
20位:森脇 ほの佳(17)※準決勝進出
21位:小武 芽生(20)※準決勝進出

<リード男子・決勝>

1位:ステファノ・ジソルフィ(24/イタリア)/TOP
2位:楢崎 智亜(21)/34
3位:キム・ハヌル(22/韓国)/31 ※準決勝2位
4位:ドメン・スコフィッチ(23/スロベニア)/31 ※準決勝3位
5位:ロメイン・デグランジュ(34/フランス)/30+ ※準決勝4位
6位:チョン・ジョンウォン(21/韓国)/30+ ※準決勝6位
7位:緒方 良行(19)/27+
8位:是永 敬一郎(21)/24+
―――――
10位:藤井 快(24)※準決勝進出
21位:樋口 純裕(25)※準決勝進出
26位:野村 真一郎(20)※準決勝進出
32位:渡部 桂太(24)

<スピード女子・決勝>

1位:ユリヤ・カプリナ(24/ロシア)/7秒66
2位:アヌーク・ジョベール(23/フランス)/7秒73

<スピード男子・決勝>

1位:アレクサンダー・シコフ(20/ロシア)/6秒32
2位:アスパル・ジャエロロ(25/インドネシア)/6秒33
―――――
30位:楢崎 智亜(21)/7秒85
32位:藤井 快(24)/8秒54
35位:緒方 良行(19)/10秒25

※1・2位選手のタイムは決勝記録
※日本人選手のタイムは予選記録

CREDITS

篠幸彦 /

写真

(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会