「毎年4月下旬から5月にかけて、『五月病』のGoogle検索数が顕著に増加する」。一般社団法人 教育コミュニケーション協会が、2020年4月19日~2025年4月19日までのGoogle検索データを分析した結果です。なんとなく理解できますよ…

「毎年4月下旬から5月にかけて、『五月病』のGoogle検索数が顕著に増加する」。

一般社団法人 教育コミュニケーション協会が、2020年4月19日~2025年4月19日までのGoogle検索データを分析した結果です。

なんとなく理解できますよね。

「やる気が出ない」「無気力」「何もしたくない」といったキーワードも、「五月病」の検索数増加とともに上昇する傾向が見られたそう。

「何もしたくない」は年間検索数が多い

「何もしたくない」というキーワードは、そもそも年間を通して比較的高い検索数を示しています。

そして「仕事 辞めたい」「退職代行」も、「五月病」のピークとほぼ同時期に、検索数が急増する傾向にあるといいます。

五月病による心理的な不調が、直接的に退職願望に結びついている可能性を強く示唆しており、2025年の現時点でも、「五月病」と「仕事辞めたい」を中心に検索数の上昇が見られます。

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こうした悩みが大きくなる前に、職場の誰かに相談すればいいのに……と考えた人も多いのでは。しかし相談までには高いハードルがあるようなのです。

「“言えない”のではなく、“言い合えない”職場環境が問題」

これらの分析結果を踏まえ、一般社団法人 教育コミュニケーション協会代表の木暮太一氏は、次のようにコメントしています。

木暮氏:「五月病」という言葉で表現される不調の初期段階において、人々が「やる気が出ない」「無気力」といった曖昧な言葉で検索するのは、自身の状態を明確に認識できていない、という側面だけでなく、職場において心理的な不調を率直に「言い合えない」環境が背景にある可能性も否定できません。

もし、風通しの悪い職場環境であれば、たとえ自身の不調に気づいていても、それを上司や同僚に相談することに躊躇してしまうでしょう。不調を「言えない」のではなく、「言っても無駄だ」「理解されないだろう」といった諦めや恐れから、「言い合えない」状況が生まれてしまうのです。

その結果、心理的な負担は増大し、「何もしたくない」という強い言葉の検索や、「仕事 辞めたい」といった最終的な手段を検討する検索行動につながってしまうのではないでしょうか。心理的な不調を気軽に相談できる、オープンなコミュニケーションが不足した職場環境こそが、問題の深刻化を招く根本的な原因であると考えられます。

言い合えるよう、1on1ミーティングなどを導入している企業も多いでしょう。しかしそれもいまいち効果が出ていない。なぜでしょうか。

1on1導入企業でも生じる”対話の機能不全”、なぜ?

多くの企業では、従業員の離職対策やエンゲージメント強化を目的として、1on1ミーティングなどの対話の枠組みが導入されています。しかし、木暮氏は、そのような枠組みだけでは十分な効果を発揮しないと指摘します。

木暮氏:近年、1on1ミーティングを導入する企業が増えていますが、その枠組みだけを整えても、従業員が本当に心理的な負担を打ち明けられるとは限りません。

「言い合えない」職場環境の本質的な課題が解決されていない場合、1on1は単なる業務報告の場と化し、従業員は表面的な情報しか共有しない可能性があります。

上司が業務に関する質問をするだけで、従業員が自身の抱える不安や不満、言葉にならないモヤモヤした感情を安心して打ち明けられる雰囲気がない場合、対話は機能不全に陥ります。形だけの対話では、従業員の心理的なSOSのサインを見逃してしまう可能性があります。

そして、結果として、「五月病」のような季節性の不調をきっかけに、深刻な状況に陥ってしまうケースも考えられます。

重要なのは、対話の「量」ではなく「質」です。上司と部下の間に信頼関係が構築され、心理的な安全性が確保された環境でなければ、従業員は本音を語ることができません。対話の枠組みを導入するだけでなく、その運用において、従業員が安心して自身の内面を共有できるような 仕組みを構築することが不可欠です。

<Edit:編集部>