サッカーの華といえば、やはりゴールだろう。戦術面などで進化を続けるサッカーだが、その過程で突然、「ゴール不足」に悩まさ…

 サッカーの華といえば、やはりゴールだろう。戦術面などで進化を続けるサッカーだが、その過程で突然、「ゴール不足」に悩まされることがある。現在、Jリーグが直面している、サッカーの保守化、右傾化に、サッカージャーナリスト大住良之が警鐘を鳴らす!

■今シーズン「極端に少ない」ゴール

 Jリーグが少し心配だ。

 今季のJ1の試合を見ていると、得点が極端に少ないのだ。4月16日(水)に行われた3試合では合計11得点(1試合平均3.67得点)が入ったが、この日までの計102試合の総得点数は221得点。1試合平均2.17点という低い数字である。

 ちなみに、2015年から2024年までの10シーズン、全3134試合の合計得点は8375。1試合平均では2.67になる。この10年間で、コロナ禍の影響と思われる2020年と2021年はそれぞれ1試合平均2.83、3.01という高い得点数が記録されたが、他はすべて2.5点台から2.6点台の中に収まっている。ちなみに、昨シーズン、2024年は380試合で1013得点、1試合平均2.67と、この10年間の平均とほぼ同じだった。

 得点が少ないのは、もちろん、シュート数が少ないからだ。過去10年間の1試合平均シュート数は20.87。今季102試合で記録されたシュート数は1756。1試合平均17.22本と、明らかに減少している。過去10シーズンのシュート数はほぼ1試合20本程度で推移しており、それを割ったのはわずか2シーズン(2023年=19.68本、2022年=19.46本)だった。10年間で最少の2022年は、得点数も最も低く、1試合平均2.52点だった。

■攻撃の「貧弱さ」か、それとも…

 サッカーは攻撃力と守備力のせめぎ合いだ。どんなチームでも、相手からしゅ奪おう奪おうと努力するが、同時に、相手には得点させないよう努力もする。得点はその均衡がほんの少し乱れるところに生まれる。今季のJリーグの得点の少なさ(=シュートの少なさ)は、攻撃の貧弱さによるものだろうか、それとも守備力が高められていることによるものなのか―。

 勝点を得るには、守備力は欠くことのできない要素だ。もし多くのチームが「取ることよりも取られないこと」に力を注いでいるのなら、それは「右傾化(保守化)」を意味している。守備的なリーグは魅力を失い、ファンは離れていく。両チーム合わせてシュートが10本にも満たない試合(今季、まさにそういうゲームがあった)、ファンが息をのむようなシーンがほとんどない試合、GKのセーブがなかった試合など、誰が喜んで見に行くだろうか。

■14回のW杯で「最小数字」の大会

 サポーターは、どんな内容でも、アディショナルタイムの最後の1秒まで声を落とさず、声援を送り続ける。その姿勢には頭が下がる。しかし、リーグやチームがそれに甘えていてはいけない。「エンターテインメント」として魅力がなければ、Jリーグは衰退に向かっていく。その危機感を持たなければならない。

 今季J1の1試合平均「2.17」というと、思い出す数字がある。「2.21」。1990年のワールドカップ・イタリア大会での1試合平均得点数である。出場24チーム、全52試合で記録された得点は115。1試合平均2.21点は、それまでの14回のワールドカップで最少の数字だった。

 ちなみに、1930年の第1回大会からその直前の1986年メキシコ大会までの13大会、全412試合で生まれた総得点は1328。1試合平均3.22。1954年スイス大会では26試合で140点、1試合平均5.38というたくさんのゴールが生まれたが、1960年以降の大会はすべて2点台の後半という形だった。

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