即戦力なら社会人選手――昔からドラフトの”定説”として語られてきたが、近年はその̶…
即戦力なら社会人選手――昔からドラフトの”定説”として語られてきたが、近年はその”定説”に疑問を持たれるほど、特に野手については社会人出身選手の即戦力としての活躍が目立たなくなっていた。だがそれでも、DeNAの倉本寿彦(日本新薬→2014年ドラフト3位)や戸柱恭孝(NTT西日本→2015年ドラフト4位)、楽天の足立祐一(パナソニック→2015年ドラフト6位)といった選手たちのように入団してすぐに主力となり、チームを支えている例もある。
そしてなんといっても、昨年、トヨタ自動車からドラフト3位で西武に入団した源田壮亮だ。ショートのレギュラーを獲得し、ここまで全試合に出場。リーグ4位の154安打を放つなど、パ・リーグ新人王の最有力候補となっている。

源田が抜けた後、トヨタのショートを守る藤岡裕大
ちょうど昨年の今頃の時期、ドラフトの話題でいろいろなメディアに出させていただいた。相手が聞きたいのは、創価大の田中正義(現・ソフトバンク)であり、桜美林大の佐々木千隼(現・ロッテ)や横浜高の藤平尚真(現・楽天)、履正社の寺島成輝(現・ヤクルト)といった選手たちのことだ。
そのなかで私は「トヨタの源田壮亮は守備だったら、すぐレギュラーですよ」と、ことあるごとに言っていた。しかし、まったく相手にされなかった。あるテレビ番組にいたっては、源田についての発言部分は見事にカットされてしまった。
それがこの活躍である。久しぶりに社会人野球から骨っぽい”仕事師”が生まれた印象だ。では、今年の社会人野手のなかに、源田のように1年目からチームの中軸として活躍が期待できる選手はいるのだろうか。
その候補の筆頭は、源田の後輩、トヨタ自動車の藤岡裕大(24歳/178センチ83キロ/右投左打/亜細亜大)。「1番・ショート」で使ったら、もしかしたら源田以上の成績を残すのでは……そう期待を抱かせる身体能力の持ち主だ。
昨年の都市対抗で優勝したときは、華麗なフィールディングを見せていたショート・源田の姿をライトのポジションから眺めていた。それでも、右中間フェンス際のライナーに飛びつくスーパーキャッチを見せ、ライトポール際に転がった打球は猛スピードで処理し、矢のような送球でランナーを刺す。外野手としても十分に魅力的な選手だったが、今年は源田が抜けたことでショートを守っている。
随所でポテンシャルの高さを見せつけているが、特に三遊間からダイレクトで刺せるスローイングは、間違いなくプロでもトップクラス。売りものになる”鉄砲肩”だ。
流れるような身のこなしが源田のフィールディングスタイルなら、藤岡は瞬発力と力強さで勝負するタイプ。源田とはひと味違ったショートストップになるだろう。
同じショートでもうひとりの注目株が、NTT東日本の福田周平(25歳/169センチ69キロ/右投左打/明治大)。走攻守すべてにおいて、すでにプロの域に達している選手だ。決して体格的に恵まれているわけではないが、プレーを見ていても非力な印象をまったく受けない。むしろ、持ち前の俊敏性と鍛え上げた一瞬のパワーで意外性を発揮。相手チームにアッと言わせる仕事をやってのける。
崩れた体勢からのスローイングの強さと高い精度。一瞬にして消えるような盗塁のスタートとスライディングスピード。さらに、「長打はないな……」と思っていたら、右中間深いところに放り込むパワーも見せつける。とにかく、敵も味方も油断ならない”くせ者”だ。
このふたり以外にも、今年の社会人には楽しみな選手が控えている。
まず驚かされたのが、西濃運輸の捕手・松本直樹(24歳/178センチ85キロ/右投右打/立教大)のスローイングだ。軽やかなフットワークを生かしたステップから抜群にうまい遊撃手のようなスナップスローは、ヤクルト全盛期を支えた古田敦也とダブる。
地肩の強さというより全身の敏捷なメカニズムで投げる超スピードタイプ。手首が強く、指先の感覚も鋭敏。どんな捕球体勢からも、とっさの指先のあんばいでベースの上に合わせてしまう。スローイングの実戦力は、すでにプロ級だ。
ちなみに松本は立教大出身だが、東京六大学のリーグ戦で見たことは一度もない。なぜなら、在学中はずっと控えだったからだ。
「どうなか?」と思われていたバッティングも、都市対抗とこの秋の日本選手権予選では大事な場面でホームランを放つなど急成長中。この1年、ずっとレギュラーとしてマスクを被った経験も大きく、今がいちばん野球を面白いと感じているはず。
そしてもうひとり、捕手でイチ押しの選手がいる。NTT西日本の大城卓三(25歳/187センチ86キロ/右投左打/東海大)だ。社会人3年目だが、見るたびにディフェンス力が上がっている。
NTT西日本のエース・吉元一彦は、多彩な変化球と精緻なコントロールで勝負する社会人野球屈指のテクニシャンである。そんな”腕利き”と3年間バッテリーを組んで、全国の大舞台で経験を積んできた。ストレートを一旦選択肢から外し、複数の変化球だけで配球を組み立てる。そうして打者に変化球を意識させておいて、懐(ふところ)にストレートを要求する。
「してやったり」の配球で見逃しの三振に仕留めても、感情を表に出すわけでもなく、涼しい顔でボール回しを始める。そんな”ニクい場面”を、この夏の都市対抗でも何度か見かけた。
東海大相模時代は夏の甲子園で準優勝を果たし、東海大時代は全国制覇を達成し、MVPも獲得した。もともと強打の捕手として注目されていたが、社会人での3年間で本物の捕手へと変貌を遂げた。
今回挙げた4人は、プロに進んでからもきちんと”仕事”のできる選手である。確信とまでは言わないが、かなり自信はある。