カブスで異彩を放ち、名門投手陣をけん引する今永。(C)Getty Images特筆すべき「4シームの使い方」 至高の舞台…

カブスで異彩を放ち、名門投手陣をけん引する今永。(C)Getty Images
特筆すべき「4シームの使い方」
至高の舞台で小柄な日本人左腕が異彩を放っている。メジャーリーグの名門カブスで2年目を迎えた今永昇太だ。
ルーキーイヤーの昨季に29先発15勝(3敗)、防御率2.91、WHIP1.02という堂々たる成績を残した今永は、今季も開幕から好調を維持。スモールサンプルに過ぎない3先発ながら2勝をマークし、防御率は圧巻の0.98。クレイグ・カウンセル監督が「彼はしっかりと自分の投球をする。それが全てだ。一球一球、次の球も、その次の球も、しっかり投げるべきボールを投げる。彼はミスをしない」と絶賛する内容を披露している。
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「2年目のジンクス」という言葉があるように、球界では相手の研究が深まる2年目に苦労するというのが通説。だが、NPBを含めれば9年のキャリアを誇る今永にとっては、そうした心配は杞憂なのかもしれない。少なくともエース級の投手として君臨している今の姿に不安材料は見られない。
「前年と同じことをできる場所ではないと思ってます。その瞬間にベストだと思う投球に基づいてプレーするだけです」
米紙『New York Times』で冷静に語る。そんな今永の投球において特筆すべきは、4シームの使い方だ。
今永の4シームは、投手のパワーが劇的に進化し続けているMLBにおいて決して早い部類ではない。それはリーグ全体から約2.7キロも低い92.3マイル(約148.5キロ)という平均球速が何よりも物語る。
それでも“平均以下”の真っすぐは打たれない。被打率.154という数値が示すように多くの打者がグッと身構えてしまう凄みがある。
その要因の一つとして挙げられるのは、高低の使い分けだ。メジャーリーグでは長打になりやすいといわれている“バレルゾーン”でのアジャストに重きを置く打者は少なくない。そうした中で今永がDeNA時代に多用していた低めにズバッと決まる4シームはすくわれてしまうリスクが生じる。
そこで生きているのが、NPBで捉えられることもあった高めの真っすぐである。平均スピン数は2199回を記録する今永の真っすぐはホップ成分が多く、たとえ捉えられても長打になる可能性を抑えられるのである。また、身長178センチの体躯を利して肘のアングルを下げたボールが見極めにくいフォームによって、「遅い真っすぐ」は抜群の効果を発揮していると言えよう。
子どもが手本にすべき今永の投球
実際、百戦錬磨の大投手も“投げる哲学者”の異名を授かる今永の投球術に舌を巻いたことがある。昨年5月にMLB公式ネット局『MLB Network』の番組で、カージナルスで2度の最多勝賞に輝くなど、メジャー通算200勝を挙げた名投手アダム・ウェインライト氏は「イマナガは4シームをゾーンの高めに本当に上手く投げ込んでいる。これは全ての投手ができる技じゃない」と激賞。そして、こうも続けた。
「いいかい、私はこれを見ている子どもたちに言いたいんだ。メジャーリーグに行くために、必ずしも100マイル(約160.9キロ)を超えるボールを投げる必要はない。重要なのはいかにコントロールするかだ。彼(今永)のように、ピッチャー有利のカウントを作り、ボールを上下に動かせればいいんだ。彼は自在にスイーパーも、スプリットも投げられるが、それは4シームを良いところに積極的に使っているからだと思っている」
かくいうウェインライト氏も力技でねじ伏せるようなタイプの投手ではなかった。現役時代は平均90.7マイル(約146キロ)の4シームを軸に、チェンジアップとカットボールを巧みに使い分けながら打者を翻弄。今永同様に身に着けた「術」で勝ち星を重ねた。
無論、今永自身の向上心の賜物だ。常に強打者をいかに抑えるかを模索し続け、メジャーリーグにまでたどり着き、「カブスのエース」と評されるまでに至った31歳に興味を抱かずにはいられない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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