2025年春の選抜 スカウトの選手評〜野手編  横浜高校の優勝で幕を閉じた第97回選抜高校野球大会。スカウトたちにとってはドラフト上位候補に挙げられるような注目選手が少なく、厳しい大会になったようだ。それでも投手はそれなりに名前が挙がったが…

2025年春の選抜 スカウトの選手評〜野手編 

 横浜高校の優勝で幕を閉じた第97回選抜高校野球大会。スカウトたちにとってはドラフト上位候補に挙げられるような注目選手が少なく、厳しい大会になったようだ。それでも投手はそれなりに名前が挙がったが、野手は多くのスカウトが「これじゃあ仕事にならない」とため息をついた。低反発の新基準バットになって2年目、「投高打低」の状況は変わらずといったところだろうか。そんななか、スカウトが注目した野手は誰なのか?


主将としてチームを優勝に導いた横浜・阿部葉太

 photo by Ohtomo Yoshiyuki

【高卒でプロに挑戦してほしい】

 現時点では進学が有力だが、大会ナンバーワン野手の評価を得たのは横浜の阿部葉太(外野手)。沖縄尚学戦で右中間に豪快に叩き込んだ一発は、低反発バットとは思えない打球だった。

「スイングが強いのはもちろんですが、頭のよさを感じます。状況によって、自分がどういう打席を送ればいいのかわかっている感じがしました。最低限、ランナーは進めてくれるだろうとか、何かしてくれる安心感がある。見ていてワクワクする選手ですよね。個人的には高卒でプロに勝負してほしい」(セ・リーグスカウトB氏)

「今大会の野手のなかでバッティングは抜けている。能力の高さが目立ちました。足と肩はまあまあですけど、それを差し置いても魅力がある。進学するらしいけど4年後は1位候補になるでしょう。元阪神の高山俊(日大三--明治大)や広島の野間峻祥(村野工業--中部学院大)のように、大学で成長してもらいたいですね」(パ・リーグスカウトC氏)

 内野手で一番の評価だったのは、天理の赤埴幸輝。甲子園では前評判どおりの実力を披露とはいかなかったが、守備面の評価が高かった。

「スローイングは柔らかさがあってよかった。プロで教われば捕球はうまくなるので、スローイングがいいのは魅力だよね。バッティングは結果が出なかったけど、右肩は開かないし、悪くはない。立ち姿や打席の雰囲気はいいし、『こんなもんじゃない。もう1回見たい』と思える選手ですね」(パ・リーグスカウトA氏)

「守備型のショートですよね。秋よりはグラブが下りるタイミングがよくなった。守りは成長しています。ただ、打つ方が弱いので、力をつけてもらいたいですね」(セ・リーグスカウトD氏)

「この大会では印象に残る結果を出せなかったけど、それなりにやれていた印象です。特筆すべきものがあるわけではないですけど、プロに行けばなんだかんだ一軍で出るような選手になるんじゃないかな。阪神でプレーする小幡竜平も、延岡学園時代はそんな評価だったような気がします」(パ・リーグスカウトC氏)

【ほかに名前が挙がった4人の野手】

 残念ながら、現時点でプロが「ほしい」と思うのはこの2選手のみ。ただ、これではあまりにも淋しいので名前が挙がった選手を紹介する。

イーマン琉海(エナジックスポーツ・内野手)

「足もあるし、バッティングもいい。あの能力があって、もし体が大きかったら(164センチ、65キロ)上位候補ですよ。甲子園の舞台であれだけやれる(2試合連続4安打)というのも魅力。乗った時はすごいね」(セ・リーグスカウトB氏)

岡部飛雄馬(敦賀気比・内野手)

「165センチ、66キロと体は小さいけど、センスを感じました。バッティングも小力(こぢから)があるよね。ただ彼のようなタイプは、全方向にヒットを打てるようにならないと厳しい。意識を変えて練習してほしいですね」(パ・リーグスカウトC氏)

蛯名翔人(青森山田・内野手)

「長打も打てるし、大型のセカンド(183センチ、89キロ)として魅力はあります。ただ、スローイングが悪く、守備はセカンドが精一杯。夏までにどれだけバッティングでアピールできるか」(セ・リーグスカウトD氏)

福元聖矢(智弁和歌山・外野手)

「バットは振れるし、バッティングは悪くない。打席での雰囲気はありますね」(パ・リーグスカウトA氏)

 特に野手に関しては、現時点では名前を挙げてもらうのもひと苦労という感じの大会だった。プロ側からすれば、「ちょっと面白い。夏の大会まで見たい」というレベルの選手はすでに進学を希望しているという面もあり、熱心になれないという事情もある。

 ただ、高校生は春から夏にかけて大きく伸びる選手が出てくる。冬に鍛えた体で実戦をこなし、夏の大会では、大きく成長した選手が出てくることを期待したい。