「選抜高校野球・決勝、横浜11-4智弁和歌山」(30日、甲子園球場) 決勝が行われ、横浜(神奈川)が2006年以来、19年ぶり4度目の優勝を果たした。昨秋の明治神宮大会Vから、松坂世代の98年以来となる“秋春連覇”。史上初の快挙となる2度…

 「選抜高校野球・決勝、横浜11-4智弁和歌山」(30日、甲子園球場)

 決勝が行われ、横浜(神奈川)が2006年以来、19年ぶり4度目の優勝を果たした。昨秋の明治神宮大会Vから、松坂世代の98年以来となる“秋春連覇”。史上初の快挙となる2度目の達成を、公式戦20連勝で決めた。けん引したのは、2年時の昨年5月から主将を務める阿部葉太外野手(3年)。4安打3打点をマークするなど走攻守で輝いた。

 「横浜1強」時代の幕開けを主将が告げた。聖地の芝で躍動した証し。伝統と誇りがつまったユニホームは、緑に染まっていた。27個目のアウトを奪うと、阿部葉は左拳を一塁側アルプスへ突き上げ、ゆっくりと仲間の元へ。「限られた高校しか立てない場所。ここまで来られた」。心地よい疲労感に包まれ、最後に歓喜の輪へ飛び込んだ。

 スーパープレーで完全に流れをものにした。3-1の六回2死三塁。相手5番・荒井が放った打球は、中前に弾む適時打かと思われた。だが、突っ込んできた阿部葉がダイビングキャッチ。「打った瞬間『いける』と。あそこで1点を取られてしまったら完全に流れが向こうに行ってしまう。捕れて良かった」。沸き返る甲子園。直後の攻撃は打者一巡6得点の猛攻で、難敵を突き放した。

 まさに走攻守での活躍だった。内野安打で出塁した初回2死一塁では、相手の警戒をかいくぐるディレードスチールで二塁を陥れ、奥村頼の先制適時打を演出。同点の三回1死二、三塁では、外角高め直球を逆らわずに逆方向へはじき返し、左翼線への勝ち越し適時二塁打を放った。「これが横浜の主将のあるべき姿」。昭和、平成、令和-。センバツ史上初となる3元号Vを導いた。

 新伝説の旗頭だ。2年生ながら主将に抜てきされた。中学時代も主将を務めたが、当初は「戸惑いはありました。指導者と一緒になって『チームを作る』という点は全く違う」と重責を痛感。昨夏の神奈川大会決勝では、あとアウト6個から逆転負けで甲子園を逃し、悔しさを味わった。

 ただ、村田監督は言う。「チームの仕上がりが悪くて、正直もっと早く負けると思っていた。こんなに変わるんだ、学年は関係ないんだなって」。指揮官は「たたかれましたけど…」と苦笑いで付け足す。2年生主将が公になった昨夏県大会の抽選会は3年生を行かせることも考えたが「阿部が『行きます』と」。すでに腹はくくっていた。

 試合直後、指揮官と握手した阿部葉は思わず目頭を熱くした。「監督さんを男にできた。横浜高校に来て、本当に良かった」-。でも、まだ終わらない。「今度は深紅の大優勝旗を手にしたい」と阿部葉。伝説の完結は、まだ先だ。

 ◆歴代7位のブランク優勝 センバツで19年ぶりの優勝は歴代7位のブランク優勝。最大は1991年に優勝した広陵(広島)の65年ぶり。

 ◇阿部 葉太(あべ・ようた)2007年8月6日生まれ、17歳。愛知県出身。179センチ、85キロ。右投げ左打ち。田原市立東部小2年から田原東部スポーツ少年団で野球を始め、田原市立東部中では愛知豊橋ボーイズに所属。横浜では1年夏からベンチ入り。50メートル走5秒9、遠投100メートル。