高橋尚成が占うMLBポストシーズン~ナ・リーグ編 MLB経験者である高橋尚成氏が、ポストシーズン進出チームの戦力を分…

高橋尚成が占うMLBポストシーズン~ナ・リーグ編

 MLB経験者である高橋尚成氏が、ポストシーズン進出チームの戦力を分析。前回のア・リーグ編に続き、プレーオフ予想~ナ・リーグ編をお伝えしたい。ナ・リーグからプレーオフに進出するのは、ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブス、ワシントン・ナショナルズ、アリゾナ・ダイヤモンドバックス、コロラド・ロッキーズの5チーム。はたして、ダルビッシュ有、前田健太擁するドジャースはワールドシリーズに進出することができるのだろうか。



ヒザを痛め長期離脱していたブライス・ハーパーだったがプレーオフには間に合った

 今年のナ・リーグ西地区は、ドジャースが104勝58敗、勝率.642と圧倒的な強さで制しました。ただ、シーズン序盤からメジャー史上最多勝利数を更新する勢いで勝利を積み重ねていましたが、終盤は11連敗があるなど失速。ケガ人が出たことも大きいですし、ダルビッシュ有をはじめとした大型補強によってチームのバランスが微妙に変化したことで、かみ合わなくなったのではないかと感じています。

 ドジャースには絶対的エースであるクレイトン・カーショーがおり、彼の出来がポストシーズンの流れを左右するのは間違いありません。でも、キーマンを挙げるならリリーバーのペドロ・バエズだと思っています。

 シーズン終盤は調子を落としましたが、8月末まで防御率1点台と抜群の安定感を誇りました。また投げるポジションも、クローザーのケンリー・ジャンセンの前もあれば、試合中盤から登板して相手の流れを食い止める役割もある。とにかくいろんな局面で登板し、チームの勝利に貢献してきました。ポストシーズンでもフル回転で起用されるでしょう。彼の活躍なくして、ワールドシリーズ進出はないと思います。

 また、同じブルペン陣にはトニー・ワトソンという投手もいます。彼とはパイレーツ時代に一緒にプレーしたことがあり、左の変則ながらパワーがあり、1イニングを任せられるピッチャーです。彼の存在もベンチにとっては心強いと思います。

 ドジャースの打者で注目しているのは、コーリー・シーガーです。今季「2番・ショート」として活躍し、彼がケガで離脱したときにはチームも調子を落とすなど、なくてはならない存在になっています。彼の働きというのも、ドジャースにとっては重要になるでしょうね。

 昨年のワールドチャンピオンのカブスは、地区優勝を果たしたものの「本物の強さ」を感じません。ポストシーズンに入ってからチームが一気に変わることもありますが、ピッチャー陣が不安定で、守り切る野球を実践するのは難しいと思います。

 ワイルドカードに出場するダイヤモンドバックスとロッキーズですが、力的にダイヤモンドバックスがリードしている気がします。先発にはザック・グレインキーという大黒柱がいて、7月中旬にデトロイト・タイガースから移籍してきたJ・D・マルティネスもチームにフィットしており、波に乗ると怖いなという印象があります。

 またダイヤモンドバックスには、私がエンゼルス時代にバッテリーを組んだジェフ・マシスと、クリス・アイアネッタというふたりのキャッチャーがいます。

 マシスはインサイドワークに長(た)け、1点を守り切るリードができる”キャッチャーらしいキャッチャー”です。一方のアイアネッタは意外性があり、「そこでそういう球を投げさせるの?」というリードをしてきます。バッティングもよく、まさに”打てる捕手”という印象です。このふたりを、かつて日本のヤクルトでプレーした経験を持つトーリ・ロブロ監督がどう使い分けて起用するのか。采配にも注目ですね。

 そしてナショナルズですが、マックス・シャーザー、ジオ・ゴンザレス、スティーブン・ストラスバーグの先発三本柱が安定しており、唯一の弱点だったブルペン陣もシーズン途中にショーン・ドゥーリトルとライアン・マドソンをトレードで獲得するなど、課題をクリアしました。

 打つ方でもブライス・ハーパーが復帰し、打線に厚みが増しました。投打のバランスがいちばん取れているチームで、私はワールドシリーズに進出するのはナショナルズだと思っています。

 ポストシーズンは、昨年カブスが一気にワールドチャンピオンまで駆け上がったように、やはり勢いに乗ったチームが強いのかなと思います。特に、このような短期決戦では「この試合」「この場面」といったように、チームが変わるポイントというのがあるはずです。そうした流れをつかみ、チームに勢いをつくれたチームが勝ち上がる。そうしたポイントに注目して観戦するのも面白いと思います。

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 ナ・リーグのポストシーズンは、日本時間の10月5日、ダイヤモンドバックスとロッキーズのワイルドカードからスタートする。グレインキーとジョン・グレイのマッチアップとなりそうだ。メジャーの頂点が決まるまでの約1カ月、これから起こるであろうドラマから目が離せない。

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