選抜高校野球2回戦(25日、甲子園)○聖光学院(福島)7―4早稲田実(東京)● 焦らずじっくりと粘り、ついに巡ってきたチャンスを聖光学院の主将・竹内啓汰は逃さなかった。 3―3の七回1死二塁。竹内は早稲田実の3番手右腕・中島颯之介が投じた外…
選抜高校野球2回戦(25日、甲子園)
○聖光学院(福島)7―4早稲田実(東京)●
焦らずじっくりと粘り、ついに巡ってきたチャンスを聖光学院の主将・竹内啓汰は逃さなかった。
3―3の七回1死二塁。竹内は早稲田実の3番手右腕・中島颯之介が投じた外角直球を捉えた。強いゴロは遊撃手の左を抜けて外野へ。二塁走者の生還を確認すると、竹内は仲間たちが喜ぶベンチに向けて、笑顔を浮かべた。
この勝ち越し打で勢いに乗り、この回に計3得点で一気に突き放した。竹内は「終盤にかけて粘り強さをしっかり出せた」と充実感をにじませた。
最大3点差から試合をひっくり返せたのは、偶然ではない。
早稲田実を「分が悪い」相手とみていた聖光学院は、相手エースの中村心大(こうだい)の攻略が勝機につながるとみていた。中村は140キロ台後半の直球があり、昨夏の甲子園で完封の経験もある今大会屈指の左腕だ。
攻略の糸口として、聖光学院の斎藤智也監督は中村の球数に着目した。初戦で五回までに90球近くを要していた。だから、「終盤になれば相当きついだろうなと思い、まずは序盤にファウルで粘って多く投げさせるようにした」。
斎藤監督の指示通り、各打者は初回からしつこく粘った。竹内は「高めの球を打ってもフライにしかならない。高めに関しては見切って、低めのストライクゾーンに来た球を低く強く振り抜くぞ、っていう対策を徹底的にやってきた」。
狙い通りに球数を投げさせ、相手に疲れが出てきた四回、竹内の適時二塁打など3得点で同点に。この回限りでマウンドを一度降りた時、中村の球数は「80」に上っていた。
早稲田実の和泉実監督が「中村の後は、表が出るか裏が出るか分からない投手ばかり」と嘆いたように、それ以降、聖光学院は相手のリリーフ陣を攻め立てるだけだった。
伝統校を退け、12年ぶりの8強入り。竹内は「チームの目標は日本一」と言いつつ、「目の前の一戦をしっかりと戦っていく。聖光学院らしい粘り強い野球をあすも体現したい」と気を引き締めた。【高橋広之】