◆大相撲春場所千秋楽(23日・エディオンアリーナ大阪) 初Vに、またしても届かなかった。高安は年6場所制となった1958年以降で2番目の年長記録となる35歳0か月での初賜杯を逃した。本割で阿炎を破って臨んだ優勝決定戦。大の里に立ち合いで後退…

◆大相撲春場所千秋楽(23日・エディオンアリーナ大阪)

 初Vに、またしても届かなかった。高安は年6場所制となった1958年以降で2番目の年長記録となる35歳0か月での初賜杯を逃した。本割で阿炎を破って臨んだ優勝決定戦。大の里に立ち合いで後退させられたが、土俵際で粘り、左を差して下手投げを仕掛けた。だが、不十分な体勢で逆に背中から送り出され、館内に悲鳴と歓声が交錯した。「しょうがないですね。実力負けしてしまって。圧力負けして、下がってしまったので…」。悔しさを押し殺し、気丈に語った。

 元大関は2度の決定戦と、6度の優勝次点に涙をのんできた。王手をかけていた14日目に痛恨の3敗を喫したが、過去の苦い教訓から「楽しまないとダメ。こんなことはいつも経験できるわけじゃない。引退したらできない」と切り替えた。朝稽古は吹っ切れた表情で汗を流した。「年は重ねたけど、今が一番強い」と土俵に立ったが、9度目の挑戦も最後に力尽きた。

 今場所で高安に向けられた観客の声援や拍手は際立って大きかった。八角理事長(元横綱・北勝海)も「よく頑張っている。夢を諦めないで頑張ってほしい」とねぎらった。17年夏場所以来3度目の技能賞も受賞。来場所は三役復帰も濃厚だ。「ファンの方の応援に支えられた。忘れられない場所になった。来場所も優勝目指して頑張ります」。35歳は賜杯を抱くその日まで、挑み続ける。(林 直史)