「大相撲春場所・千秋楽」(23日、エディオンアリーナ大阪) 大関大の里が3場所ぶり3度目の優勝を飾った。本割で大関琴桜を寄り切り、12勝3敗で並んだ高安を優勝決定戦で撃破した。大関昇進後は初制覇となった。春巡業での故郷凱旋(がいせん)に花…

 「大相撲春場所・千秋楽」(23日、エディオンアリーナ大阪)

 大関大の里が3場所ぶり3度目の優勝を飾った。本割で大関琴桜を寄り切り、12勝3敗で並んだ高安を優勝決定戦で撃破した。大関昇進後は初制覇となった。春巡業での故郷凱旋(がいせん)に花を添え、夏場所(5月11日初日、両国国技館)では綱とりに挑む。高安は悲願の初優勝を逃したが、技能賞を獲得した。

 口を結び、力強くうなずいた。優勝決定戦。今場所を含め2戦全敗の高安を制し、確信するかのようにうなずいた。

 「本割で1回も勝てていない相手。最後は気持ち。勝てて良かった。細かいことを気にせず、やることをやれば大丈夫」

 立ち合いで圧力をかけ、高安得意の左をねじ込まれても構わず前へ。土俵際で逆転を狙う下手投げにも動じず、上手を利かせて送り出した。大関初、地方場所でも初優勝。圧巻のパワーだった。

 12日目の王鵬戦で3敗目を喫し自力優勝が消滅し「もう優勝はない」と自身を責めるように吐き捨てた。「3敗した時点で全く(優勝を)考えなかったのが逆に良かったのかも」。師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)の弟弟子で、自身の“おじ”に当たる高安には巡業で胸を出されて転がされ、感謝していた。恩返し星でもあった。

 新大関で迎えた昨年九州場所は、体調が万全でなく9勝止まり。初場所は序盤につまずき10勝に終わった。今場所は「立ち合いと土俵際」をテーマに出稽古を行い、番数を増やす努力を重ねた。

 昨年元旦の能登半島地震で苦しむ地元への思いは強い。4月7日には故郷の石川県津幡町で55年ぶりの巡業が開催予定。「大阪で優勝できて地元に帰れることをうれしく思います」と喜んだ。大阪入り前日の2月24日には同町で昇進後初の報告会を実施。父親の中村知幸さん(48)は「ご飯を食べて家の布団で寝てリフレッシュできたと思う」と英気を養った。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「相手を圧倒している。12勝は大きい。早く上がってほしい」と言及。横綱審議委員会の推薦内規には「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」とあり、夏場所は綱とりがかかることは必至の情勢だ。

 師匠の二所ノ関親方は「右肩上がりで成長して、安定した成績を残すのが仕事。僕から見たらまだまだ」と話すが、大の里は「来場所が大事。自分のペースでやるべきことをやれば大丈夫」と前を向く。師匠の厳しい愛と、地元の温かい愛に守られながら、次期横綱の筆頭候補が勝負の夏場所へと向かう。