選抜高校野球1回戦(18日、甲子園)○健大高崎(群馬)3―1明徳義塾(高知)● 試合後、真っ赤に腫らした両目に、友への思いが詰まっていた。健大高崎は先発の背番号10、下重賢慎が負傷したエースへの思いを胸に延長十回、136球を一人で投げ…

【健大高崎-明徳義塾】力投する健大高崎の先発・下重=阪神甲子園球場で2025年3月18日、金澤稔撮影

選抜高校野球1回戦(18日、甲子園)

○健大高崎(群馬)3―1明徳義塾(高知)●

 試合後、真っ赤に腫らした両目に、友への思いが詰まっていた。健大高崎は先発の背番号10、下重賢慎が負傷したエースへの思いを胸に延長十回、136球を一人で投げ抜いた。

 2点のリードをもらった延長十回。マウンドに向かう直前、石垣元気から声をかけられた。

 「今日のお前なら大丈夫だ。投げきってくれ」

 最速154キロを誇る背番号1からのエールは、何よりも心強かった。雨が降りしきる中、ツーシームを巧みに使って無失点に抑えると、左拳を何度も力強く握った。

 石垣は大会前に脇腹を痛めていた。下重は大事な初戦の先発に起用され、「自分で抑えられるか、不安で怖かった」。

 一回は緊張から2四球と荒れたが、何とか無失点で切り抜けた。ベンチにいた石垣に笑顔で「力むなよ」と声をかけられ、本来の制球力を取り戻した。

 「状態の良くない石垣のために、自分が少しでも長く投げる」。五回に同点とされたが、六回以降は特に右打者への外に沈むツーシームと内角直球のコンビネーションがさえ、被安打1のみに封じた。

 優勝した前回大会のエース、佐藤龍月(りゅうが)が肘のけがで今大会は野手に専念する中、同じ北海道出身の石垣と切磋琢磨(せっさたくま)し、投手陣を支えてきた。

 「石垣と佐藤の存在が自分を高めてくれた。石垣は注目されていて、プレッシャーもすごいと思うので、自分が支えてあげられるようなピッチングをしたい」と誓っていた。

 頼もしい下重の姿に、石垣も「本当に心強いなと思います」と穏やかに目を細めた。

 度重なるアクシデントに見舞われても、前回王者の結束は揺るがなかった。【皆川真仁】